実務的で解り易く、licensors/licensees双方の視点から留意点を記載
☆☆☆☆
自分のようなfinance関係の人間でも、software licenseに関しての基本的な知識が無いと、legalやtaxの人間との話ができなかったり、deal structuringの際にも支障をきたすことがあるので、気になった契約条項の背景や考え方等を知る目的で辞書のような感覚で使おうと思い購入した。
最初の250ページ程度がトピック毎の説明で、残りは注釈付きの契約書を含めた各種サンプル契約書といった構成になっているが、
・各トピックの説明は実務的で分り易く、
・前半の個々のトピック毎の説明箇所と、後半の注釈付きサンプル契約書間でcross referencesが施されており便利、
・注釈付きサンプル契約書の注釈はかなり丁寧、
・licensors/licensees双方の視点からの記述はバランスがとれており、契約の相手側の立場ならどういうことを考えるのか?ということも解って有益、
といった点で優れていると思う。
book reviews, etc. Note that reviews prior to April, 2010 are mostly the same as those found at Amazon.co.jp or Amazon.com
Sunday, January 24, 2010
Sunday, November 22, 2009
[Book Review] This Time Is Different: Eight Centuries of Financial Folly
”There is nothing new except what is forgotten”- Rose Bertin
☆☆☆☆
最終章(第17章)が収められている第四部のテーマ”What have we learned?”の下に、このローズ・ベルタン(ルイ16世の王妃マリー・アントワネットに仕えたデザイナーらしい)の言葉が添えられているのがユーモラスである。
タイトルの”This time is different”「今回は違う」は勿論反語的に使われており、好景気の時でも今回のような未曾有の世界経済危機からの脱却の際でも「今回は(これまでとは)違う」という種々のもっともらしい理由が喧伝されるが、膨大なデータに基き過去数世紀に渡る世界の債務不履行や金融危機の歴史を紐解いてみると、「今回は違うシンドローム」の信憑性は疑わしく、世界経済の先行きを楽観するのは全く時期尚早であり、むしろデータから読み取れる「歴史は繰り返す」ということを充分に念頭においておく必要があると本書は警鐘している。
その例として、14章に纏めてある興味深い数字を幾つか紹介すると(対象期間は殆どが第二次世界大戦後の世界中の経済危機で一部戦前の大恐慌時のケースを含む。数字は経済危機発生前のピーク時と危機発生後の底値の差を示したもの)、
■住宅価格は平均すると6年間に渡り下落し平均下落率は▲35.5%
■株価下落は平均で3.4年間に渡り平均下落率は▲55.9%
■失業率は平均で4.8年間に及び平均上昇率は+7%
また、政府債務といえば、これ迄は、データの入手が極めて困難であるという事情もあってか、対外債務にのみ焦点が当てられることが多かったようであるが、著者達は世界各国の国内の債務状況に関するデータも整理したうえで、これらの影響は無視できないとしている。
非常に広範囲で長期に渡るデータを整理したうえでの実証研究であり読み応えがあると共に、膨大なデータから過去を検証して、そこから読み取れることをベースにした謙虚な提言の書である。
☆☆☆☆
最終章(第17章)が収められている第四部のテーマ”What have we learned?”の下に、このローズ・ベルタン(ルイ16世の王妃マリー・アントワネットに仕えたデザイナーらしい)の言葉が添えられているのがユーモラスである。
タイトルの”This time is different”「今回は違う」は勿論反語的に使われており、好景気の時でも今回のような未曾有の世界経済危機からの脱却の際でも「今回は(これまでとは)違う」という種々のもっともらしい理由が喧伝されるが、膨大なデータに基き過去数世紀に渡る世界の債務不履行や金融危機の歴史を紐解いてみると、「今回は違うシンドローム」の信憑性は疑わしく、世界経済の先行きを楽観するのは全く時期尚早であり、むしろデータから読み取れる「歴史は繰り返す」ということを充分に念頭においておく必要があると本書は警鐘している。
その例として、14章に纏めてある興味深い数字を幾つか紹介すると(対象期間は殆どが第二次世界大戦後の世界中の経済危機で一部戦前の大恐慌時のケースを含む。数字は経済危機発生前のピーク時と危機発生後の底値の差を示したもの)、
■住宅価格は平均すると6年間に渡り下落し平均下落率は▲35.5%
■株価下落は平均で3.4年間に渡り平均下落率は▲55.9%
■失業率は平均で4.8年間に及び平均上昇率は+7%
また、政府債務といえば、これ迄は、データの入手が極めて困難であるという事情もあってか、対外債務にのみ焦点が当てられることが多かったようであるが、著者達は世界各国の国内の債務状況に関するデータも整理したうえで、これらの影響は無視できないとしている。
非常に広範囲で長期に渡るデータを整理したうえでの実証研究であり読み応えがあると共に、膨大なデータから過去を検証して、そこから読み取れることをベースにした謙虚な提言の書である。
Sunday, August 30, 2009
[Book Review] Exotic Preferences: Behavioral Economics and Human Motivation
人間の心の奥底を捉える深い考察
☆☆☆☆
行動経済学の第一人者Loewenstein教授が、過去に発表した自らの学術論文のうち20本余りを集めたもので、各論文の最初の部分では、論文を執筆した背景や意図を紹介している。これらの論文のテーマとなっているのは、個々人の好み・選好というのは、どのように形成されるのか?それらは予測可能なのか?どの程度理性ではなく感情に左右されるのか?といったことである。
例えば最初の論文では、世界的な登山家や探検家(エベレスト、南極等)といった人達を取り上げ、何が彼らを、遭難・凍傷・生命の危機と隣り合わせのハイリスクで想像を絶する過酷な自然環境への挑戦に駆り立てるのか?を登山家・探検家が書いた書物を紐解きながら考察している。
私自身は経済学者でも心理学者でもない一介のビジネスパーソン故に、諸学説の発展や相互の関係といった点には興味も無いが、人間の心理の奥底をえぐるような本質的な考察は読んでいて非常に興味深い。最近では、行動経済学の分野では、種々の研究成果を私のような一般の読者にも解り易く面白く紹介した一般書物が出版されており(例えば、Dan Ariely著”Predictably Irrational”邦題:「予想どおりに不合理」)、
それらは非常に有益であることに異論はないが、本書のような第一人者の一つ一つのテーマで掘り下げて書いた論文は、素人には取っ付き難いながらも、深い考察を読み取ることが出来て違った楽しみがある。
☆☆☆☆
行動経済学の第一人者Loewenstein教授が、過去に発表した自らの学術論文のうち20本余りを集めたもので、各論文の最初の部分では、論文を執筆した背景や意図を紹介している。これらの論文のテーマとなっているのは、個々人の好み・選好というのは、どのように形成されるのか?それらは予測可能なのか?どの程度理性ではなく感情に左右されるのか?といったことである。
例えば最初の論文では、世界的な登山家や探検家(エベレスト、南極等)といった人達を取り上げ、何が彼らを、遭難・凍傷・生命の危機と隣り合わせのハイリスクで想像を絶する過酷な自然環境への挑戦に駆り立てるのか?を登山家・探検家が書いた書物を紐解きながら考察している。
私自身は経済学者でも心理学者でもない一介のビジネスパーソン故に、諸学説の発展や相互の関係といった点には興味も無いが、人間の心理の奥底をえぐるような本質的な考察は読んでいて非常に興味深い。最近では、行動経済学の分野では、種々の研究成果を私のような一般の読者にも解り易く面白く紹介した一般書物が出版されており(例えば、Dan Ariely著”Predictably Irrational”邦題:「予想どおりに不合理」)、
それらは非常に有益であることに異論はないが、本書のような第一人者の一つ一つのテーマで掘り下げて書いた論文は、素人には取っ付き難いながらも、深い考察を読み取ることが出来て違った楽しみがある。
Sunday, March 1, 2009
[Book Review] Outliers: The Story of Success
成功要因=成功者自身の周辺環境や時代背景が幾つか重なった結果....
☆☆☆☆☆
これまで成功と言うモノは、個人の資質や努力といった面に多くの焦点を当てて語られることが多かった。
本書で著者は、成功した人自身の努力の程度もさることながら、その本人の生まれた年、祖先の出身地、人種や気質、両親の職業、社会制度や法律の制定された年等々、本人を取り巻く周辺環境や時代背景に視点を拡げて観察している。そして、成功というのは、時代背景や環境等、各々の要因を個別に見れば決して重要乃至は決定的とは思えないような、小さな幸運・偶然・機会が幾つも重なった上に成り立っているという事実を、幾つかの例(1月生まれのアイスホッケー選手が多い理由、ビートルズが有名になった理由、ビル・ゲイツが成功した理由、ユダヤ系に成功した企業のtake-over関連の弁護士が多い理由、アジア系の学生が一般的に数学が得意な理由等)を挙げて述べている。逆に、各々の要因を個々に見れば全く致命的ではないような些細な過失や不運が幾つも重なると大惨事(飛行機事故や原子力発電所の事故等)に至る原因となり得ることも指摘している。
著者の本はいつも、これまでは考えても見なかったような視点から、社会現象や物事の本質を解明するという部分が非常に斬新で面白い。
☆☆☆☆☆
これまで成功と言うモノは、個人の資質や努力といった面に多くの焦点を当てて語られることが多かった。
本書で著者は、成功した人自身の努力の程度もさることながら、その本人の生まれた年、祖先の出身地、人種や気質、両親の職業、社会制度や法律の制定された年等々、本人を取り巻く周辺環境や時代背景に視点を拡げて観察している。そして、成功というのは、時代背景や環境等、各々の要因を個別に見れば決して重要乃至は決定的とは思えないような、小さな幸運・偶然・機会が幾つも重なった上に成り立っているという事実を、幾つかの例(1月生まれのアイスホッケー選手が多い理由、ビートルズが有名になった理由、ビル・ゲイツが成功した理由、ユダヤ系に成功した企業のtake-over関連の弁護士が多い理由、アジア系の学生が一般的に数学が得意な理由等)を挙げて述べている。逆に、各々の要因を個々に見れば全く致命的ではないような些細な過失や不運が幾つも重なると大惨事(飛行機事故や原子力発電所の事故等)に至る原因となり得ることも指摘している。
著者の本はいつも、これまでは考えても見なかったような視点から、社会現象や物事の本質を解明するという部分が非常に斬新で面白い。
Sunday, January 18, 2009
[Book Review] The World Is Curved: Hidden Dangers to the Global Economy
面白い部分もあるが、冗漫で具体的処方箋に乏しい
☆☆☆
Thomas FriedmanのThe World Is Flatは主にテクノロジーや物流等実体経済の発展が世界をフラットにしている状況を描写したものであったのに対して、金融面では地平線の彼方は良く見えず様々な危険が潜んでいるという意味でThe World Is Curvedという題名となったようだ。
サブプライムに端を発して経済が急激に失速するまでの過去四半世紀は、資本と貿易のグローバリゼーションの進化と旺盛な企業家精神の発揮を両輪とした経済成長の恩恵を、ほぼ世界中の国々が享受した時代であった。現下の日々深刻化する経済状況化では、規制強化や保護主義の行き過ぎや、貧富の格差の増大に伴う階級間闘争といった国内外の懸念材料が強まってくるが、それによってグローバリゼーションを逆行させ企業家精神を殺してしまうようなことがあってはならず、今こそ政官民の卓越したリーダーシップを以て事にあたらねばならない、といった(煎じつめれば当たり前の)事を述べている。
民主主義や金融の透明性の面で十分とは言い難い国々の潤沢な外貨準備高をベースとした国策を背負った政府系投資ファンドの投資意図や、需給バランスを無視したような世界的な製造業の過剰生産能力と原材料の高騰の行く末といった部分等に関する記述は興味深い。一方で、本書の文脈とは余り関係ないと思われるような著者個人の種々の経験談に多くのページが割かれ、各章毎の内容と全体が余り上手く繋がっていないような印象を受けるうえに、数字は多く出てくるのに表やグラフが一つも無く数字と論理展開の整合性がとれているのか否か解らないような構成で、問題解決の為の具体的処方箋(how?)の提示が殆ど見られない雑誌の記事が冗漫になったような印象の残る本という感想は否めない。・・・にも関わらず、多くの著名な政治家・ポリシーメーカー・経済学者等の賛辞と推薦文が記載されているのが謎である。
☆☆☆
Thomas FriedmanのThe World Is Flatは主にテクノロジーや物流等実体経済の発展が世界をフラットにしている状況を描写したものであったのに対して、金融面では地平線の彼方は良く見えず様々な危険が潜んでいるという意味でThe World Is Curvedという題名となったようだ。
サブプライムに端を発して経済が急激に失速するまでの過去四半世紀は、資本と貿易のグローバリゼーションの進化と旺盛な企業家精神の発揮を両輪とした経済成長の恩恵を、ほぼ世界中の国々が享受した時代であった。現下の日々深刻化する経済状況化では、規制強化や保護主義の行き過ぎや、貧富の格差の増大に伴う階級間闘争といった国内外の懸念材料が強まってくるが、それによってグローバリゼーションを逆行させ企業家精神を殺してしまうようなことがあってはならず、今こそ政官民の卓越したリーダーシップを以て事にあたらねばならない、といった(煎じつめれば当たり前の)事を述べている。
民主主義や金融の透明性の面で十分とは言い難い国々の潤沢な外貨準備高をベースとした国策を背負った政府系投資ファンドの投資意図や、需給バランスを無視したような世界的な製造業の過剰生産能力と原材料の高騰の行く末といった部分等に関する記述は興味深い。一方で、本書の文脈とは余り関係ないと思われるような著者個人の種々の経験談に多くのページが割かれ、各章毎の内容と全体が余り上手く繋がっていないような印象を受けるうえに、数字は多く出てくるのに表やグラフが一つも無く数字と論理展開の整合性がとれているのか否か解らないような構成で、問題解決の為の具体的処方箋(how?)の提示が殆ど見られない雑誌の記事が冗漫になったような印象の残る本という感想は否めない。・・・にも関わらず、多くの著名な政治家・ポリシーメーカー・経済学者等の賛辞と推薦文が記載されているのが謎である。
Sunday, September 28, 2008
[Book Review] The Subprime Solution: How Today's Global Financial Crisis Happened, and What to Do About It
再び「必要は発明の母」となって経済社会は発展するか?
☆☆☆☆
サブプライム危機に短期的には救済で対応し国民心理の冷え込みが経済全体に及ぼす甚大なインパクトを回避し, 長期的にはデリバティブ等の金融技術の不動産市場への適用によるリスクの小口化・分散化を図り、持家関連の各種保険制度の整備拡充といった社会インフラとしての金融制度を充実発展させて、その効果を国民全体が享受できるようにすること(financial democracy)であると説く。
1929年の世界恐慌後に発明(創設)された住宅ローン関連の種々の制度、預金保険機構、証取委員会の設置といった(現在では当たり前と思われているような)社会インフラの整備は、当時の状況からは非常に大胆な発想だったが、現下の危機に臨むに際しても同様に「必要は発明の母」としての想像力豊かで大胆な発想が求められており、著者の提言は長期的施策の中身の一部を構成する。関心させられるのは、金融技術の進歩に対する、この確固たる揺ぎ無い信念である。
一方で、私は金融の門外漢で見識も持ち合わせていないが、長期的施策の前提となるべき部分では、(本書151ページで引用されている論文からも) デリバティブが資産市場のボラティリティを縮小させるということは必ずしも実証研究では(否定的結論は出ていないものの)総じて肯定的には証明されている訳ではない様であるし(但し流動性面では効果はあるらしい)、不動産関連市場でのデリバティブの推進が不動産バブルの発生を回避することに繋がるのかどうかは、デリバティブが更に進んだ株式市場でも依然バブルは発生していることを考えると効果の程については良くわからない。また、そもそもデリバティブを通じて不動産関連のリスクを小口化し広く分散化させることが経済にとって良いことであると言えるレベルまで、現実のリスクマネジメントの方法論や手法は発展していないのではないか?という漠然とした懸念は依然残る。
☆☆☆☆
サブプライム危機に短期的には救済で対応し国民心理の冷え込みが経済全体に及ぼす甚大なインパクトを回避し, 長期的にはデリバティブ等の金融技術の不動産市場への適用によるリスクの小口化・分散化を図り、持家関連の各種保険制度の整備拡充といった社会インフラとしての金融制度を充実発展させて、その効果を国民全体が享受できるようにすること(financial democracy)であると説く。
1929年の世界恐慌後に発明(創設)された住宅ローン関連の種々の制度、預金保険機構、証取委員会の設置といった(現在では当たり前と思われているような)社会インフラの整備は、当時の状況からは非常に大胆な発想だったが、現下の危機に臨むに際しても同様に「必要は発明の母」としての想像力豊かで大胆な発想が求められており、著者の提言は長期的施策の中身の一部を構成する。関心させられるのは、金融技術の進歩に対する、この確固たる揺ぎ無い信念である。
一方で、私は金融の門外漢で見識も持ち合わせていないが、長期的施策の前提となるべき部分では、(本書151ページで引用されている論文からも) デリバティブが資産市場のボラティリティを縮小させるということは必ずしも実証研究では(否定的結論は出ていないものの)総じて肯定的には証明されている訳ではない様であるし(但し流動性面では効果はあるらしい)、不動産関連市場でのデリバティブの推進が不動産バブルの発生を回避することに繋がるのかどうかは、デリバティブが更に進んだ株式市場でも依然バブルは発生していることを考えると効果の程については良くわからない。また、そもそもデリバティブを通じて不動産関連のリスクを小口化し広く分散化させることが経済にとって良いことであると言えるレベルまで、現実のリスクマネジメントの方法論や手法は発展していないのではないか?という漠然とした懸念は依然残る。
[Book Review] Predictably Irrational: The Hidden Forces That Shape Our Decisions
人間というのは...なんとも非合理的....
☆☆☆☆☆
所謂一般読者向けに経済学と心理学に跨る領域を扱う行動経済学の種々のリサーチ結果から、一見以外な人間の非合理性を焙り出す面白い内容になっている。例えば、
・全く関係ない数字を、ある商品を買っても良い価格判断のベースにしてしまったり、
・数種類のオファリング価格の中にダミーが入っていると無意識にその価格に引っ張られた判断をしてしまったり、
・無料と1円の差異が判断に及ぼす心理的インパクトはとてつも無く大きかったり、
・社会規範(social norm)と市場規範(market norm)の文脈を間違えて、互恵といった考え方に代表される前者の文脈で対処すべきところに、後者のお金の概念を持ち込むと人間関係、企業の消費者対応や従業員対応等々あらゆる面で総スカンを食うとか、
・人間は冷静な状態と興奮した状態では好き嫌いや善悪の許容度といった点での判断に大きな差が出てしまうとか、
・自分が所有している物の価値測定に際しては感情移入をしてしまう結果とてつもなく過大評価をしてしまう、
等々、多くの意外性を持ったリサーチ結果から、人間の判断というのは、これまでの標準的な経済学が前提としているような合理的なものではなく、非合理的なことが多く、且つその非合理性はランダムで無分別なものではなく、システマチックで予測可能なものである(≒人間は首尾一貫して非合理的)なのであると説いている。人間とはそういうものだということを知っておくだけでも、いろんな間違いを回避することには役立ちそうである。
本書と殆ど同じ領域を扱っている本として”Sway: The Irresistible Pull of Irrational Behavior”も読んでみたが、どちらか1冊読むのであれば、内容の充実度から本書(Predictably Irrational)をお勧めする。
☆☆☆☆☆
所謂一般読者向けに経済学と心理学に跨る領域を扱う行動経済学の種々のリサーチ結果から、一見以外な人間の非合理性を焙り出す面白い内容になっている。例えば、
・全く関係ない数字を、ある商品を買っても良い価格判断のベースにしてしまったり、
・数種類のオファリング価格の中にダミーが入っていると無意識にその価格に引っ張られた判断をしてしまったり、
・無料と1円の差異が判断に及ぼす心理的インパクトはとてつも無く大きかったり、
・社会規範(social norm)と市場規範(market norm)の文脈を間違えて、互恵といった考え方に代表される前者の文脈で対処すべきところに、後者のお金の概念を持ち込むと人間関係、企業の消費者対応や従業員対応等々あらゆる面で総スカンを食うとか、
・人間は冷静な状態と興奮した状態では好き嫌いや善悪の許容度といった点での判断に大きな差が出てしまうとか、
・自分が所有している物の価値測定に際しては感情移入をしてしまう結果とてつもなく過大評価をしてしまう、
等々、多くの意外性を持ったリサーチ結果から、人間の判断というのは、これまでの標準的な経済学が前提としているような合理的なものではなく、非合理的なことが多く、且つその非合理性はランダムで無分別なものではなく、システマチックで予測可能なものである(≒人間は首尾一貫して非合理的)なのであると説いている。人間とはそういうものだということを知っておくだけでも、いろんな間違いを回避することには役立ちそうである。
本書と殆ど同じ領域を扱っている本として”Sway: The Irresistible Pull of Irrational Behavior”も読んでみたが、どちらか1冊読むのであれば、内容の充実度から本書(Predictably Irrational)をお勧めする。
[Book Review] Sway: The Irresistible Pull of Irrational Behavior
いとも簡単に振れてしまう判断....
☆☆☆
Swayとは人間の意識の中に潜み合理的な行動を妨げる隠れた力のことで、一部を紹介すると本書では以下のような概念を興味深い例示で説明している。
Loss aversion(損失に対して過剰反応をし、これを回避する為に合理的には想定できないようなことをしでかす)
・ KLMの安全責任者であった機長が時間の遅れを取り戻そうと飛行機の離陸時のルール無視して引き起こした狂気の沙汰とも言える大惨事
・ 損失を確定せずに、いつか相場が反転すると期待して損切りできない投資家の心理
・ 20ドル紙幣のオークションに204ドル迄値が競り上がってしまう不思議
Value attribution(客観的なデータにも基かず直感をベースに物事を判断する)
・ 世界的なバイオリン奏者が地下鉄のホームでジーンズに野球帽といった格好でで演奏をしていても、誰も気に留めずに通り過ぎてしまう(奏者の身なり服装から有名な音楽家だとは誰も思わない→演奏している音楽のクオリティや技術も大したことないと判断してしまう)
・ 値段を上げたら急に商品が売れ出した(ものの価格を見て「高い=高級品に違いない」と判断する)
・ 同じコンサートでも高い金を払って入場した人の方が満足度が高い
Diagnosis bias (人、モノ、考え等に対して最初に下した判断に囚われ、後に、この先入観に反する客観的な情報が提供されても、従前の判断を変えることができない)
・ NBAバスケットボール選手の試合出場時間は当該選手がドラフト何位で指名されたかとの相関が圧倒的に強い(ドラフト順位が高ければ良い選手のはずという先入観が後々まで影響する)
・ 初めて会う人の性格等につき事前に知らされたイメージ(それが事実であろうが無かろうが)を払拭することができない
…..等々、興味深い例をもとに人間の判断がいかに非合理的な方向に振れるかを説明している。”Influence” (Robert Cialdini著)や”Predictably Irrational”(Dan Ariely著)と内容的に共通する部分が多い。
☆☆☆
Swayとは人間の意識の中に潜み合理的な行動を妨げる隠れた力のことで、一部を紹介すると本書では以下のような概念を興味深い例示で説明している。
Loss aversion(損失に対して過剰反応をし、これを回避する為に合理的には想定できないようなことをしでかす)
・ KLMの安全責任者であった機長が時間の遅れを取り戻そうと飛行機の離陸時のルール無視して引き起こした狂気の沙汰とも言える大惨事
・ 損失を確定せずに、いつか相場が反転すると期待して損切りできない投資家の心理
・ 20ドル紙幣のオークションに204ドル迄値が競り上がってしまう不思議
Value attribution(客観的なデータにも基かず直感をベースに物事を判断する)
・ 世界的なバイオリン奏者が地下鉄のホームでジーンズに野球帽といった格好でで演奏をしていても、誰も気に留めずに通り過ぎてしまう(奏者の身なり服装から有名な音楽家だとは誰も思わない→演奏している音楽のクオリティや技術も大したことないと判断してしまう)
・ 値段を上げたら急に商品が売れ出した(ものの価格を見て「高い=高級品に違いない」と判断する)
・ 同じコンサートでも高い金を払って入場した人の方が満足度が高い
Diagnosis bias (人、モノ、考え等に対して最初に下した判断に囚われ、後に、この先入観に反する客観的な情報が提供されても、従前の判断を変えることができない)
・ NBAバスケットボール選手の試合出場時間は当該選手がドラフト何位で指名されたかとの相関が圧倒的に強い(ドラフト順位が高ければ良い選手のはずという先入観が後々まで影響する)
・ 初めて会う人の性格等につき事前に知らされたイメージ(それが事実であろうが無かろうが)を払拭することができない
…..等々、興味深い例をもとに人間の判断がいかに非合理的な方向に振れるかを説明している。”Influence” (Robert Cialdini著)や”Predictably Irrational”(Dan Ariely著)と内容的に共通する部分が多い。
Sunday, May 25, 2008
[Book Review] influence: The Psychology of Persuasion
An outstanding account about how the human mind is influenced
☆☆☆☆☆
We are all consumers of goods and services in some way or another, and I am glad I have read this…. hopefully I should have done so much earlier, but certainly better late than never. The author discusses how the psychological mechanism works in making decisions, saying “yes” to a request, how our decisions are influenced/swayed, and how we can prevent ourselves from the situations where we likely end up making unwanted decisions and/or being exploited by ill-intended profiteers. In so doing, the six underlying principles: reciprocation, commitment/consistency, social proof, liking, authority, and scarcity, are introduced with ample examples from various intriguing researches, and how these potent influencers can be commissioned by those who want us to consciously or unconsciously comply with their requests. Used with due professional ethics, the six principles can be very effective marketing tools, but we as consumers would be certainly better equipped with understanding of the principles when dealing with someone who tries to pull a trick or two and manipulate our attitudes and behaviors.
☆☆☆☆☆
We are all consumers of goods and services in some way or another, and I am glad I have read this…. hopefully I should have done so much earlier, but certainly better late than never. The author discusses how the psychological mechanism works in making decisions, saying “yes” to a request, how our decisions are influenced/swayed, and how we can prevent ourselves from the situations where we likely end up making unwanted decisions and/or being exploited by ill-intended profiteers. In so doing, the six underlying principles: reciprocation, commitment/consistency, social proof, liking, authority, and scarcity, are introduced with ample examples from various intriguing researches, and how these potent influencers can be commissioned by those who want us to consciously or unconsciously comply with their requests. Used with due professional ethics, the six principles can be very effective marketing tools, but we as consumers would be certainly better equipped with understanding of the principles when dealing with someone who tries to pull a trick or two and manipulate our attitudes and behaviors.
Saturday, March 29, 2008
[Book Review] Plight of the Fortune Tellers: Why We Need to Manage Financial Risk Differently
Risk management is about making decisions under uncertainty
☆☆☆☆☆
The main theme is that risk management is not about measuring risk, or assessing probabilities, but it is about making decisions under uncertainty. The author says that the existing framework of risk management, which is heavily based on “frequentist” approach to probabilities (i.e. repeatability under identical conditions, weak prior beliefs, etc.) does not necessarily serve for decision-usefulness associated with managing risks; “subjective” (Bayesian) probabilities tend to be better suited to the purposes. Focusing on the outcome of decisions relieves us from dogmatic probabilists and allows us eclectically to arrive at the best prediction we can, using whatever tool we have at our disposal. While the author’s argument appears to make a lot of sense, the Bayesian probabilities brings in subjectivity such as prior information/knowledge, which in itself seems helpful, I wonder what if we are not confident of such prior information, as we cannot know what we cannot anticipate (i.e. an “unknown unknown”: an uncertainty that is unanticipated)? Or put it differently, if we already have had good, reliable prior information about whatever the risk we attempt to assess, then, we would not have much to worry about to begin with, I presume….. Well, we probably should not try to rely on statistical approach to such an extremely high percentile to be considered effectively meaningless (I hasten to throw in my disclaimer here that I am not proficient enough in statistics to discuss the matter in detail!)
Those who have found Nassim Nicholas Taleb’s “The Black Swan” and “Fooled by Randomness” fascinating would be intrigued by this timely, engaging , and highly accessible account, which provides not only professional risk managers but also amateur investors like me with numerous insights.
☆☆☆☆☆
The main theme is that risk management is not about measuring risk, or assessing probabilities, but it is about making decisions under uncertainty. The author says that the existing framework of risk management, which is heavily based on “frequentist” approach to probabilities (i.e. repeatability under identical conditions, weak prior beliefs, etc.) does not necessarily serve for decision-usefulness associated with managing risks; “subjective” (Bayesian) probabilities tend to be better suited to the purposes. Focusing on the outcome of decisions relieves us from dogmatic probabilists and allows us eclectically to arrive at the best prediction we can, using whatever tool we have at our disposal. While the author’s argument appears to make a lot of sense, the Bayesian probabilities brings in subjectivity such as prior information/knowledge, which in itself seems helpful, I wonder what if we are not confident of such prior information, as we cannot know what we cannot anticipate (i.e. an “unknown unknown”: an uncertainty that is unanticipated)? Or put it differently, if we already have had good, reliable prior information about whatever the risk we attempt to assess, then, we would not have much to worry about to begin with, I presume….. Well, we probably should not try to rely on statistical approach to such an extremely high percentile to be considered effectively meaningless (I hasten to throw in my disclaimer here that I am not proficient enough in statistics to discuss the matter in detail!)
Those who have found Nassim Nicholas Taleb’s “The Black Swan” and “Fooled by Randomness” fascinating would be intrigued by this timely, engaging , and highly accessible account, which provides not only professional risk managers but also amateur investors like me with numerous insights.
Subscribe to:
Comments (Atom)