China Priceの安さの原因を構造的に炙り出す
☆☆☆☆
・Complianceを遵守させつつ安値を求める→社員の勤務時間等に関する二重帳簿管理から、法的には会社として登録もされていない幽霊会社へのアウトソーシング等により低コストで対応。誰の為のコンプライアンスなのか?中国からソーシングする先進国企業のreputationを汚さないという意味でのrisk managementの観点からのCYA (cover your ass)的なコンプライアンス。だから、根本原因を直視して解決しようとしない。
・一方で中央政府が決める法規制を地方自治体は遵守することなく結果的に法は骨抜きになってしまっている。それは経済発展が各地方の評価尺度となっているので、その地域の企業の競争力を弱め、短期的に経済発展の阻害要因となり得るような法規制の遵守を徹底(law enforcement)させるようなインセンティブは地方自治体には無い。従い、ここに建前と実態の並存状況が生み出され、贈収・腐敗は構造的に発生する。
・違法な長時間労働及び賃金、危険で劣悪な労働環境、保険への未加入、事故や労働災害の頻発、劣質或いは有害な原材料の使用、有害物質や汚水汚濁の垂れ流しや環境への無配慮、といった結果としての現象は、上述のような構造的な社会の仕組みに原因があることを示唆している。そして、そういう部分を蔑ろにしたところで成り立っているChina Priceというのは、本当に安いのか?持続可能なのか?ということだろう。
・近年では、一方で労働者意識の高まり(ここ数ヶ月の各地でのストライキ等に関する最新の状況に関する秀逸な報道は、例えばFinancial Timesを参照。本書を読めば、現在起こっていることの背景もよく解る)、そして他方で一部の先進的な経営者による従業員の為の労働環境整備が離職率等を抑え品質やコストにも(追加コストほどではないものの)見返りがあることと、ソーシング元の先進国企業への価格転嫁及び選択的な受注といった形で状況は一部では改善も見られるようでもある。
・本書は、China Priceを可能としている実態と構造を炙り出し、その実態を知らしめるという点で重要な貢献をしていると思う。その結果、消費者が(下請け・孫受け等々まで含めて)法規制面・環境面等でコンプライアンスを遵守している企業からしか買わないし、その場合は少し値段が高くても受け入れる、という意識の醸成及びアクション(消費者の見識)が一定の社会的な力となってくれば、大きな改善が見込めるのだと思う。
因みに、既に日本語訳も出ているようだ。読んでいないので翻訳のレベルは知らないが、題名がイマイチではある。
book reviews, etc. Note that reviews prior to April, 2010 are mostly the same as those found at Amazon.co.jp or Amazon.com
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Saturday, July 31, 2010
Saturday, July 10, 2010
[Book Review] Crush It!: Why NOW Is the Time to Cash In on Your Passion
パーソナル・ブランディングをベースとした事業へのソーシャル・メディアの使い方
☆☆☆☆
Amazon.com (US)でreviewの数が400を超えていたので買ってみたが、既に邦訳も出ていることを知らなかった。英書は160ページ程度で直ぐに読めるコンパクトな内容ながら、著者が自らのワイン販売のビジネスで、いかにblog及びFacebookやTwitterのソーシャルメディアを使ってきたかを具体的に書いていて非常に解り易い。
YouTubeにはWinelibrary.comのvideo blog clipをはじめコンフェランス等でのスピーチ(パフォーマンス)が多数あるし、TEDでも15分程度のものが見れる。
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Amazon.com (US)でreviewの数が400を超えていたので買ってみたが、既に邦訳も出ていることを知らなかった。英書は160ページ程度で直ぐに読めるコンパクトな内容ながら、著者が自らのワイン販売のビジネスで、いかにblog及びFacebookやTwitterのソーシャルメディアを使ってきたかを具体的に書いていて非常に解り易い。
YouTubeにはWinelibrary.comのvideo blog clipをはじめコンフェランス等でのスピーチ(パフォーマンス)が多数あるし、TEDでも15分程度のものが見れる。
[Book Review] Mindset: The New Psychology of Success
物事の捉え方(mindset)は生き方を変える
☆☆☆☆
Daniel Pink著"Drive"で紹介されている心理学分野の本のひとつ。煎じ詰めれば、人間が成功や成果を生み出すことに関する見方・考え方は、"fixed-mindset"に基づく人と"growth-mindset"に基づく人に大きく二分される。
前者(fixed-mind)は、人間の能力や才能といったものは生まれつき決まっているものであるという捉え方であり、従い、努力をしなければいけないのは能力・才能がないことの証であると共に、事がうまくいかないと、それは即ちその分野での自分の能力・才能の欠如を意味する。
一方、後者(growth-mindset)は、そうではなく、努力が人間の才能・能力を成長させるという見方である。
興味深いのは、両タイプのmindsetsの人間では、困難な状況に陥った際の対処方法が全く異なり、前者(fixed-mind)のタイプは、そもそも自らの能力・才能を否定されるような結果を招くようなことには着手したがらないので、新しいこと、難しいことにチャレンジしないという傾向があり、また、物事が上手くいかないと、そのことを自らの才能・能力の欠如であると捉え、自信喪失してしまい為す術を知らずに崩れていくことが多いのに対して、後者(growth-mindset)のタイプは、「何が悪かったのか?どうやれば上手くいくのか?」とポジティブに解決指向で対処する傾向が強く、その結果resilience(= the ability to become strong, happy, or successful again after a difficult situation or event)が高い場合が多いとのこと。
学校、スポーツ選手、仕事、親子関係、配偶者乃至は恋愛のパートナーとの関係等の面から、様々な調査研究の結果を紹介しつつ、いかにgrowth-mindsetであることが大切か、どうやってfixed-mindsetからgrowth-mindsetに変われるのか、等々をシンプルに且つ非常に強力なメッセージとして説いている。
☆☆☆☆
Daniel Pink著"Drive"で紹介されている心理学分野の本のひとつ。煎じ詰めれば、人間が成功や成果を生み出すことに関する見方・考え方は、"fixed-mindset"に基づく人と"growth-mindset"に基づく人に大きく二分される。
前者(fixed-mind)は、人間の能力や才能といったものは生まれつき決まっているものであるという捉え方であり、従い、努力をしなければいけないのは能力・才能がないことの証であると共に、事がうまくいかないと、それは即ちその分野での自分の能力・才能の欠如を意味する。
一方、後者(growth-mindset)は、そうではなく、努力が人間の才能・能力を成長させるという見方である。
興味深いのは、両タイプのmindsetsの人間では、困難な状況に陥った際の対処方法が全く異なり、前者(fixed-mind)のタイプは、そもそも自らの能力・才能を否定されるような結果を招くようなことには着手したがらないので、新しいこと、難しいことにチャレンジしないという傾向があり、また、物事が上手くいかないと、そのことを自らの才能・能力の欠如であると捉え、自信喪失してしまい為す術を知らずに崩れていくことが多いのに対して、後者(growth-mindset)のタイプは、「何が悪かったのか?どうやれば上手くいくのか?」とポジティブに解決指向で対処する傾向が強く、その結果resilience(= the ability to become strong, happy, or successful again after a difficult situation or event)が高い場合が多いとのこと。
学校、スポーツ選手、仕事、親子関係、配偶者乃至は恋愛のパートナーとの関係等の面から、様々な調査研究の結果を紹介しつつ、いかにgrowth-mindsetであることが大切か、どうやってfixed-mindsetからgrowth-mindsetに変われるのか、等々をシンプルに且つ非常に強力なメッセージとして説いている。
Saturday, June 26, 2010
[Book Review] Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us
科学に基き「飴とムチ」原理の動機付けからの脱却を提言
☆☆☆☆
"A Whole New Mind"の著者Daniel Pinkがモチベーションを論じた新作(邦訳も近日中に出版される)。近年の種々のリサーチ結果からは、「飴とムチの原理」に基く動機付けは、ルーティン業務であればともかくも、コンセプトや創造性の必要な業務(著者流に言えば右脳型の業務)に於いては逆効果であることが証明されているにもかかわらず、ビジネスの世界を中心に、依然として旧来の動機付けの考え方(extrinsic motivation)が支配的であることに対して警鐘を鳴らすと共に、職場での動機付けの方法は学術的な調査結果を踏まえて、もっと人間の内部に本来的に備わっている動機付け(intrinsic motivation)に訴えかける方法、即ち autonomy (self-direction), mastery (complianceからengagementへの意識変化を通じた恒常的な向上心), purpose (人間の本質に根ざす意義・目的意識)を重視したものに変わっていく必要があると論じる。
この主張のベースとして、
・早くも1960年に、本質的にintrinsic motivationの重要性を主張したDouglas McGregor教授のX理論・Y理論を紐解き(私も25年くらい前に大学の「経営組織論」で習ったのを覚えています。懐かしい)、更に、
・また、過去100年くらいの間に、テクノロジーが非常に大きな進歩・発展を遂げたことは周知の事実であるが、マネジメントの方法論については同様に大きなイノベーションは生じておらず、マネジメント理論にこそイノベーションが必要である事を論じると共に、如何に従業員を解き放ちベスト・パフォーマンスと創意工夫を継続的・持続的に引き出し(Making innovation everyone’s job, everyday.)、且つ同時に自発的なコミットメントと規律の効いた組織にできるか?(即ち、マネジメントのイノベーションとはマネージする事を減らすこと)を実現することが肝要であると主張したGary Hamelの"The Future of Management"(邦訳「経営の未来」)、
に通じる大きな文脈があると感じた(たまたま、本書で引用されている本の多くを過去に読んだことがあったので、そのように大きな枠組みとの関連で捉えることができたのかもしれないが)。
他にも、心理学と経済学の接点となる行動経済学分野での最近の調査結果を広く紹介したDan Arielyの"Predictably Irrational"や、新しい動機付け理論の構成要素のひとつであるMasteryについてはGeoff Colvinの"Talent is Overrated"で論じられる"deliberate practice"(特定の分野で自分が上手く出来ない部分に焦点を当てて、それを繰り返し何度も練習し、且つ練習の出来具合に関してタイムリーにフィードバックが得られるような環境で行われる、通常はかなりの苦痛を伴う高レベルの意図的・計画的な練習のこと)に言及したりと、既読書への言及や関連が多い内容で、イメージが膨らませ易く、本書で著者が論じる内容の周辺部分も含めて構造的な理解に役立った。
他にも、心理学の分野での興味深い参考文献が多い。特に心理学者Mihaly Csikszentmihalyi と Carol Dweckの著書数冊は早速注文した。
因みに本書で引用されているCarol Dweckの以下の文章は、なかなか心に響くものがある。
"Effort is one of the things that gives meaning to life. Effort means you care about something, that something is important to you and you are willing to work for it. It would be an impoverished existence if you were not willing to value things and commit yourself to working toward them."
☆☆☆☆
"A Whole New Mind"の著者Daniel Pinkがモチベーションを論じた新作(邦訳も近日中に出版される)。近年の種々のリサーチ結果からは、「飴とムチの原理」に基く動機付けは、ルーティン業務であればともかくも、コンセプトや創造性の必要な業務(著者流に言えば右脳型の業務)に於いては逆効果であることが証明されているにもかかわらず、ビジネスの世界を中心に、依然として旧来の動機付けの考え方(extrinsic motivation)が支配的であることに対して警鐘を鳴らすと共に、職場での動機付けの方法は学術的な調査結果を踏まえて、もっと人間の内部に本来的に備わっている動機付け(intrinsic motivation)に訴えかける方法、即ち autonomy (self-direction), mastery (complianceからengagementへの意識変化を通じた恒常的な向上心), purpose (人間の本質に根ざす意義・目的意識)を重視したものに変わっていく必要があると論じる。
この主張のベースとして、
・早くも1960年に、本質的にintrinsic motivationの重要性を主張したDouglas McGregor教授のX理論・Y理論を紐解き(私も25年くらい前に大学の「経営組織論」で習ったのを覚えています。懐かしい)、更に、
・また、過去100年くらいの間に、テクノロジーが非常に大きな進歩・発展を遂げたことは周知の事実であるが、マネジメントの方法論については同様に大きなイノベーションは生じておらず、マネジメント理論にこそイノベーションが必要である事を論じると共に、如何に従業員を解き放ちベスト・パフォーマンスと創意工夫を継続的・持続的に引き出し(Making innovation everyone’s job, everyday.)、且つ同時に自発的なコミットメントと規律の効いた組織にできるか?(即ち、マネジメントのイノベーションとはマネージする事を減らすこと)を実現することが肝要であると主張したGary Hamelの"The Future of Management"(邦訳「経営の未来」)、
に通じる大きな文脈があると感じた(たまたま、本書で引用されている本の多くを過去に読んだことがあったので、そのように大きな枠組みとの関連で捉えることができたのかもしれないが)。
他にも、心理学と経済学の接点となる行動経済学分野での最近の調査結果を広く紹介したDan Arielyの"Predictably Irrational"や、新しい動機付け理論の構成要素のひとつであるMasteryについてはGeoff Colvinの"Talent is Overrated"で論じられる"deliberate practice"(特定の分野で自分が上手く出来ない部分に焦点を当てて、それを繰り返し何度も練習し、且つ練習の出来具合に関してタイムリーにフィードバックが得られるような環境で行われる、通常はかなりの苦痛を伴う高レベルの意図的・計画的な練習のこと)に言及したりと、既読書への言及や関連が多い内容で、イメージが膨らませ易く、本書で著者が論じる内容の周辺部分も含めて構造的な理解に役立った。
他にも、心理学の分野での興味深い参考文献が多い。特に心理学者Mihaly Csikszentmihalyi と Carol Dweckの著書数冊は早速注文した。
因みに本書で引用されているCarol Dweckの以下の文章は、なかなか心に響くものがある。
"Effort is one of the things that gives meaning to life. Effort means you care about something, that something is important to you and you are willing to work for it. It would be an impoverished existence if you were not willing to value things and commit yourself to working toward them."
Saturday, June 19, 2010
[Book Review] 論点思考
問題解決←そもそも問題を正しく定義しているか?(正しい問題を解いているか?)
論点思考=解くべき問題を定義するプロセス
☆☆☆☆
数年前に読んだ「仮説思考」という本が(特に編集具合が酷く)余り良い印象を持たなかったので、本書はどうか、と思いつつ読み始めたが、本書は良くまとまっており得るものが多かった。
問題解決・課題解決に於いて、そもそも正しい問題を解いているか?間違った問いに答えを出そうとしていないだろうか?というのが本書のテーマ。印象に残った部分を一部挙げると、
・物事の現象と論点とは違う(例:少子化問題とは現象であって論点ではない)。
・業界全体に当てはまるようなことは、当該企業にとっての論点には成り得ない。
・論点は人(誰にとっての論点か?)に拠って、競争環境の変化、時間の経過と共に変わり得る。
・解決できないような論点設定は意味がない
・解決した暁にインパクトがないようなものはやっても無駄 (戦略とは捨てること=優先順位付け)
例示も適度にあって分かりやすい。
論点思考=解くべき問題を定義するプロセス
☆☆☆☆
数年前に読んだ「仮説思考」という本が(特に編集具合が酷く)余り良い印象を持たなかったので、本書はどうか、と思いつつ読み始めたが、本書は良くまとまっており得るものが多かった。
問題解決・課題解決に於いて、そもそも正しい問題を解いているか?間違った問いに答えを出そうとしていないだろうか?というのが本書のテーマ。印象に残った部分を一部挙げると、
・物事の現象と論点とは違う(例:少子化問題とは現象であって論点ではない)。
・業界全体に当てはまるようなことは、当該企業にとっての論点には成り得ない。
・論点は人(誰にとっての論点か?)に拠って、競争環境の変化、時間の経過と共に変わり得る。
・解決できないような論点設定は意味がない
・解決した暁にインパクトがないようなものはやっても無駄 (戦略とは捨てること=優先順位付け)
例示も適度にあって分かりやすい。
Saturday, June 12, 2010
[Book Review] Analytics at Work: Smarter Decisions, Better Results
前作を読めば充分。つまらない内容。
☆☆
3月半ばだったかに買って、3/2程度読んだが、あまりに退屈で投げ出してしまった本。
前作Competing on Analyticsが、一般受けしなさそうな内容にも関わらず、予想外に売れた為か(と冒頭で著者も書いている)、概論としての前著に対して、今回は続編(インプリ編)感じの内容である。この著者の本は、何となく常に、流行りそうなマネジメント・コンセプトを持ち上げるのに一役買っているような場合が多く、前著も言わばBI (Business Intelligence)の啓蒙本のような感じでもあったが、こんなものをマネジメントの主流理論のひとつとして真面目に取り扱うのは、いかがなものかと思う。
☆☆
3月半ばだったかに買って、3/2程度読んだが、あまりに退屈で投げ出してしまった本。
前作Competing on Analyticsが、一般受けしなさそうな内容にも関わらず、予想外に売れた為か(と冒頭で著者も書いている)、概論としての前著に対して、今回は続編(インプリ編)感じの内容である。この著者の本は、何となく常に、流行りそうなマネジメント・コンセプトを持ち上げるのに一役買っているような場合が多く、前著も言わばBI (Business Intelligence)の啓蒙本のような感じでもあったが、こんなものをマネジメントの主流理論のひとつとして真面目に取り扱うのは、いかがなものかと思う。
Saturday, June 5, 2010
[Book Review] Rework
"The real world isn't a place, it's an excuse. It's a justification for not trying. It has nothing to do with you."
☆☆☆☆
4月下旬ころに読んだ本であるが、本書に寄せられている賛辞の中で次のものが、この本の内容を上手く表現している"The brilliance of REWORK is that it inspires you to rethink everything you thought you knew about strategy, customers, and getting things done. Read this provocative and instructive book—and then get busy reimagining what it means to lead, compete, and succeed."--William C. Taylor, Founding Editor of Fast Company and coauthor of MAVERICKS AT WORK
要は、世の中で常識だと受け入れられている多くの考え方とはことごとく異なる方法で、自らの会社を創業し経営している著者による、常識に対する挑戦状の書である。冒頭にも、「多くの人間が一般的に持っている"世の中(=real world)というのはこういうモノだ"という常識的な認識が存在するからと言って、自分がそれと同じ世界観の中で生きなければならない必要はない。"real worldではこうだ"などと言うのは多くの場合、自ら考え斬新なことを試してみようとしない言い訳に過ぎない。それは我々が多くの企業にとっての常識とは全く異なる方法で経営をしてきて、成功していることで証明している」という旨のことを述べている。例えば、著者の主張を幾つか紹介すると、
■「失敗から学ぶ」という考え方は過大評価されている。「同じ失敗を繰り返すまい」ということは学べても、「じゃあ、どうやれば次は成功するのか」ということは殆どの場合学べない。失敗は成功する為の前提条件ではないのだ。成功から学ぶ方が効果的に決まっている。
■Planning特に長期計画などというのは自らコントロールできない将来の変数が多すぎるので、guessing以上のものではない。何かをやり始めるずっと前に計画を立てるのではなく、やり始める直前にプランして、やりながら常に変更を加えるのが正解。
■「何の為に?」という根本的な問いをせずに、成長して規模が大きくなることが善であるという妄信を捨てるべし。sustainableでprofitableであることの方がずっと尊いはずである。
■When you don't know what you believe, everything becomes an argument. Everything is debatable. But when you stand for something, decisions are obvious.→会社のミッションや方針というのはそういうものでないとダメ。
■変化するものにフォーカスするのではなく、変わらないものにフォーカスしろ。
■競争環境や競合相手の動向に対して取り付かれた様に気を揉むのではなく、自分達にもっとフォーカスすべし。
■顧客の要望や不満は、自社の製品の特性やターゲット領域の観点から意味のある場合のみ対応する。
■情熱と優先順位を混同してはいけない。
等々...
これら以外にも、常識と異なるわけではないが、棘や毒のある表現ながら本質を突いている部分も多い。例えば、
・What you do is what matters, not what you think or say or plan....The most important thing is to begin.
・No time is no excuse. There's always enough time if you spend it right. ...When you want something bad enough, you make the time - regardless of your other obligations.
・不毛なコミュニケーション中毒(emails, instant messaging, etc)や中断から逃れて「独り時間」を確保することが生産性向上の秘訣。
最後に、本書の中で気に入った一節"You don't create a culture. It happens. ... Culture is the byproduct of consistent behavior. .... Culture is action, not words." まさにそうである。
blogはこちら
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4月下旬ころに読んだ本であるが、本書に寄せられている賛辞の中で次のものが、この本の内容を上手く表現している"The brilliance of REWORK is that it inspires you to rethink everything you thought you knew about strategy, customers, and getting things done. Read this provocative and instructive book—and then get busy reimagining what it means to lead, compete, and succeed."--William C. Taylor, Founding Editor of Fast Company and coauthor of MAVERICKS AT WORK
要は、世の中で常識だと受け入れられている多くの考え方とはことごとく異なる方法で、自らの会社を創業し経営している著者による、常識に対する挑戦状の書である。冒頭にも、「多くの人間が一般的に持っている"世の中(=real world)というのはこういうモノだ"という常識的な認識が存在するからと言って、自分がそれと同じ世界観の中で生きなければならない必要はない。"real worldではこうだ"などと言うのは多くの場合、自ら考え斬新なことを試してみようとしない言い訳に過ぎない。それは我々が多くの企業にとっての常識とは全く異なる方法で経営をしてきて、成功していることで証明している」という旨のことを述べている。例えば、著者の主張を幾つか紹介すると、
■「失敗から学ぶ」という考え方は過大評価されている。「同じ失敗を繰り返すまい」ということは学べても、「じゃあ、どうやれば次は成功するのか」ということは殆どの場合学べない。失敗は成功する為の前提条件ではないのだ。成功から学ぶ方が効果的に決まっている。
■Planning特に長期計画などというのは自らコントロールできない将来の変数が多すぎるので、guessing以上のものではない。何かをやり始めるずっと前に計画を立てるのではなく、やり始める直前にプランして、やりながら常に変更を加えるのが正解。
■「何の為に?」という根本的な問いをせずに、成長して規模が大きくなることが善であるという妄信を捨てるべし。sustainableでprofitableであることの方がずっと尊いはずである。
■When you don't know what you believe, everything becomes an argument. Everything is debatable. But when you stand for something, decisions are obvious.→会社のミッションや方針というのはそういうものでないとダメ。
■変化するものにフォーカスするのではなく、変わらないものにフォーカスしろ。
■競争環境や競合相手の動向に対して取り付かれた様に気を揉むのではなく、自分達にもっとフォーカスすべし。
■顧客の要望や不満は、自社の製品の特性やターゲット領域の観点から意味のある場合のみ対応する。
■情熱と優先順位を混同してはいけない。
等々...
これら以外にも、常識と異なるわけではないが、棘や毒のある表現ながら本質を突いている部分も多い。例えば、
・What you do is what matters, not what you think or say or plan....The most important thing is to begin.
・No time is no excuse. There's always enough time if you spend it right. ...When you want something bad enough, you make the time - regardless of your other obligations.
・不毛なコミュニケーション中毒(emails, instant messaging, etc)や中断から逃れて「独り時間」を確保することが生産性向上の秘訣。
最後に、本書の中で気に入った一節"You don't create a culture. It happens. ... Culture is the byproduct of consistent behavior. .... Culture is action, not words." まさにそうである。
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[Book Review]星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則
定石通りに忠実にやりきることから生じる強さ
☆☆☆☆
「教科書通りの戦略=定石」だけでは自社の優位性は生まれず、定石を知った上で、如何にそこに自社ならではの「ひとひねり」を加えられるか、が競争優位を生み出すうえで肝要、といった旨のことを説く本がある(例えば、以下の本。数年前に読んだ本なので内容の詳細は覚えていないが...)。
「そうだろうなぁ」と感じる。しかし実際には、100%基本を忠実に実行できているような立派な会社など在りはしない。即ち、教科書通りに定石を実行できている会社が殆ど存在しない中で、敢えて、徹底的に教科書通りの定石にこだわり、それを実践するというところが、星野リゾートの競争優位を形成しているのだと理解した。
ミッションやヴィジョンを正しく社員に周知徹底し、常にそれらに立ち返って諸施策を考える、ターゲット顧客を正しく設定する、社員が自発的に考え行動するしくみを構築する、といったひとつひとつの部分を忠実に教科書が説く通りに実行してきた様子が描写され、また、実際にどの教科書の教えを忠実に実行したのかが紹介されている。
併せて、この方法は、考え方を社員との間で共有する際に、ベースとなっている教科書を読んでもらう、勉強会をする、といった形での方法を採ることが非常に容易であるという点で、会社の諸施策を、その考え方まで含めて社員に浸透させ、且つ、同様のコンセプトや方法論を用いて社員が考え行動するような学習・成長の環境を醸成していく観点からも効果的だと感じた。
☆☆☆☆
「教科書通りの戦略=定石」だけでは自社の優位性は生まれず、定石を知った上で、如何にそこに自社ならではの「ひとひねり」を加えられるか、が競争優位を生み出すうえで肝要、といった旨のことを説く本がある(例えば、以下の本。数年前に読んだ本なので内容の詳細は覚えていないが...)。
「そうだろうなぁ」と感じる。しかし実際には、100%基本を忠実に実行できているような立派な会社など在りはしない。即ち、教科書通りに定石を実行できている会社が殆ど存在しない中で、敢えて、徹底的に教科書通りの定石にこだわり、それを実践するというところが、星野リゾートの競争優位を形成しているのだと理解した。
ミッションやヴィジョンを正しく社員に周知徹底し、常にそれらに立ち返って諸施策を考える、ターゲット顧客を正しく設定する、社員が自発的に考え行動するしくみを構築する、といったひとつひとつの部分を忠実に教科書が説く通りに実行してきた様子が描写され、また、実際にどの教科書の教えを忠実に実行したのかが紹介されている。
併せて、この方法は、考え方を社員との間で共有する際に、ベースとなっている教科書を読んでもらう、勉強会をする、といった形での方法を採ることが非常に容易であるという点で、会社の諸施策を、その考え方まで含めて社員に浸透させ、且つ、同様のコンセプトや方法論を用いて社員が考え行動するような学習・成長の環境を醸成していく観点からも効果的だと感じた。
Saturday, May 29, 2010
[Book Review] 「借金を返すと儲かるのか?」
簿記を勉強する前に読むべき本
☆☆☆
自分のような会計やファイナンスを職業としている者を対象に書いた本では無いことは知りつつ、そういう本を読むことからの発見もあるだろうと思いから手に取った。
著者が述べているB/SとP/Lを縦に合体させた「会計公式」という考え方は、まさに、自分が20年近く前に初めて会計を勉強し始めた頃に、簿記の無味乾燥さに嫌悪感を覚えつつも「要は、この場合はB/S, P/Lのこの部分が変動するんだな..」という形で使った方法を再現したような内容だった。自分としては、こういう形で入っていく方が、ずっと取っ付き易かったし、これは会計を真面目に勉強する人にとっても、大枠を理解するところから入れる優れた方法だと思う。これが解れば、あとは変動する部分の具体的勘定科目が何か?というのは簡単な話である。自分は簿記だけを会計から切り離して勉強するなどという退屈なことはできなかったし、しなかったが、仮にこれから簿記を勉強しようと思っている学習者も、簿記を勉強する前に、先ずはこの本を読むべきだと思う。
→会計を勉強しようと思っている方々へ
「簿記を勉強する前に、先ずはこの本を読むべきだと思う」と書いてみたものの、だからと言って会計を勉強したい方々には、この本を読んだ後に簿記をやるのが良いと勧めているのかといえば、私は全くそんなことは思っていない。
むしろ、簿記という会計の単なる道具を会計そのものから切り離して学習することに大した意味があるとは思えない。アメリカで会計を勉強したので日本の本は正直余り知らないが、会計を学習するなかでその一環として道具としての簿記を一緒に学ぶというのが知的好奇心を減退させずに学ぶ方法だと思う。その意味では、(私が持っているのは随分前の版だが)以下の本は考え方が説明されている点で優れていると思う。
日本では「分厚い教科書」ということになるのだろうが、こんな程度はアメリカの大学で、学部学生が学ぶ中級財務会計の標準的なテキスト(例えば↓は定番中の定番)
に比べれば、まったく大した分量ではない。
そういえば、2-3週間程前に職場のメンバーに、上記intermediate accountingのChapter 2 (財務会計の基本的コンセプト=conceptual framework)につき説明をした。以前のいくつもの職場でもそうであったが、会計のテクニカルな面を知っていても、そのベースにあるコンセプトを充分に理解している人が案外少ないと感じていたからである。それで事前に次の問題を出して考えてもらった。
【質問】
ある会計処理をするに際して、Aと Bの2つの方法があるとします。
あなたは、どのように評価して、どちらを選びますか?
質問はたったこれだけです。因みに、
「”ある会計処理”って何の会計処理なんですか?」とか、
「AとBと2つの方法って具体的にどんな方法なんですか?」
…といった質問をしたくなるかもしれませんが、それはirrelevant (関係ない)です。
上記Kieso Intermediate AccountingのCh.2を読めば解りますし、財務会計の基本コンセプトが解っている人なら即答できるはずです。会計の質問というよりは、「frameworkっているのは、どうやって使うのか?」という話。
更にbusiness schoolとかで会計理論の勉強をすると(私がしたのは10年以上も前の話だが)、特に米国会計の場合は、financeや経済学といかに密接に繋がっているか、といのが良く解る。例えば、当時のクラスで使ったのテキストの一つが、下記のものだった(実際には数版前のもの)。
こういうのを読んで議論をする為には、上記のconceptual frameworkを良く理解していないと、もうお話にならないのである。そのようにして会計を学習してきた私は、完全に米国びいきであるが故にか、「道具である簿記を本体の会計から切り離して勉強してどうすんだよ、まったく!」という思いが非常に強いのです。
☆☆☆
自分のような会計やファイナンスを職業としている者を対象に書いた本では無いことは知りつつ、そういう本を読むことからの発見もあるだろうと思いから手に取った。
著者が述べているB/SとP/Lを縦に合体させた「会計公式」という考え方は、まさに、自分が20年近く前に初めて会計を勉強し始めた頃に、簿記の無味乾燥さに嫌悪感を覚えつつも「要は、この場合はB/S, P/Lのこの部分が変動するんだな..」という形で使った方法を再現したような内容だった。自分としては、こういう形で入っていく方が、ずっと取っ付き易かったし、これは会計を真面目に勉強する人にとっても、大枠を理解するところから入れる優れた方法だと思う。これが解れば、あとは変動する部分の具体的勘定科目が何か?というのは簡単な話である。自分は簿記だけを会計から切り離して勉強するなどという退屈なことはできなかったし、しなかったが、仮にこれから簿記を勉強しようと思っている学習者も、簿記を勉強する前に、先ずはこの本を読むべきだと思う。
→会計を勉強しようと思っている方々へ
「簿記を勉強する前に、先ずはこの本を読むべきだと思う」と書いてみたものの、だからと言って会計を勉強したい方々には、この本を読んだ後に簿記をやるのが良いと勧めているのかといえば、私は全くそんなことは思っていない。
むしろ、簿記という会計の単なる道具を会計そのものから切り離して学習することに大した意味があるとは思えない。アメリカで会計を勉強したので日本の本は正直余り知らないが、会計を学習するなかでその一環として道具としての簿記を一緒に学ぶというのが知的好奇心を減退させずに学ぶ方法だと思う。その意味では、(私が持っているのは随分前の版だが)以下の本は考え方が説明されている点で優れていると思う。
日本では「分厚い教科書」ということになるのだろうが、こんな程度はアメリカの大学で、学部学生が学ぶ中級財務会計の標準的なテキスト(例えば↓は定番中の定番)
に比べれば、まったく大した分量ではない。
そういえば、2-3週間程前に職場のメンバーに、上記intermediate accountingのChapter 2 (財務会計の基本的コンセプト=conceptual framework)につき説明をした。以前のいくつもの職場でもそうであったが、会計のテクニカルな面を知っていても、そのベースにあるコンセプトを充分に理解している人が案外少ないと感じていたからである。それで事前に次の問題を出して考えてもらった。
【質問】
ある会計処理をするに際して、Aと Bの2つの方法があるとします。
あなたは、どのように評価して、どちらを選びますか?
質問はたったこれだけです。因みに、
「”ある会計処理”って何の会計処理なんですか?」とか、
「AとBと2つの方法って具体的にどんな方法なんですか?」
…といった質問をしたくなるかもしれませんが、それはirrelevant (関係ない)です。
上記Kieso Intermediate AccountingのCh.2を読めば解りますし、財務会計の基本コンセプトが解っている人なら即答できるはずです。会計の質問というよりは、「frameworkっているのは、どうやって使うのか?」という話。
更にbusiness schoolとかで会計理論の勉強をすると(私がしたのは10年以上も前の話だが)、特に米国会計の場合は、financeや経済学といかに密接に繋がっているか、といのが良く解る。例えば、当時のクラスで使ったのテキストの一つが、下記のものだった(実際には数版前のもの)。
こういうのを読んで議論をする為には、上記のconceptual frameworkを良く理解していないと、もうお話にならないのである。そのようにして会計を学習してきた私は、完全に米国びいきであるが故にか、「道具である簿記を本体の会計から切り離して勉強してどうすんだよ、まったく!」という思いが非常に強いのです。
Sunday, May 23, 2010
[Book Review] The 80/20 Principle: The Secret of Achieving More with Less
企業の諸施策、個々人の業務、パーソナル・ライフのあらゆる面にパレートの法則を適用する
☆☆☆☆
製品の売り方、顧客管理、マーケティング施策等から、個人の仕事のやり方から、パーソナルな時間の使い方に至るまで、片っ端から80/20の法則を適用して「80%の結果を生み出している20%の活動にフォーカスする」ことを説いている。要は選択と集中に関する内容。10年程前に出版されたもののrevised版である。
特に興味深いのは「タイムマネジメントなどクソ食らえ」という部分である。即ち、「タイムマネジメントは80/20の法則を適用して、やるべきことと捨てるべき事を明確に峻別しない状態のまま、全体の生産性を上げようとしているところに、根本的な間違いがある」ということで、Don't try to manage time, but revolutionize time and multiply the 20% of your time that produces 80% of results.という感じである。確かに、これは正鵠を得ており、どこかで「どんなに忙しくても、本当に自分にとって最重要なことに費やす時間が不足することなどない」といった趣旨の言葉を読んだことがある。即ち、人間は忙しさが増すと、自分にとって重要度・優先順位の低い事柄から順に「斬り捨てる、無視する、わざとやらない、後回しにする」といった行動をとるはずであり、自分にとって最重要なことに費やす時間も無いようであれば、それは、そもそも自分の優先順位付けそのものが、何か大きく間違っている、ということなのだろう。
因みに、本書は下記の本を読んでいた際に推薦図書として挙がっていので読んだ。
↑この本は80/20 principleを個人の生き方・生活大改造の為に最大限に活かしている画期的な本である。自分がインパクトを与えることができる活動を最大限にする為に、20%の結果しか生まないが80%の時間・労力をかけている活動は大胆に止めてしまうか、或いは「他人の時間」を使ってやる、といったことも提唱している。例えば、自らの日常の事務的な雑事で且つリモートでできることを、どこかの国の人に個人秘書業務を御願いするとか、である。既に企業は製造・サービス・研究開発等あらゆる面でインド・中国・その他の国々への大々的なアウトソーシングという形でこれをやっている訳である。ならば個人レベルでやれない理由も無いということである。
更に、80/20の法則が底流にあるという意味で、上記の本と一部類似の視点があり秀逸なものがコレ↓である。
人類の歴史は自給自足で、衣食住の全てを自分達でやることから、衣料はお店で買い、他人が建設した家やマンションを買って住み、食料はスーパーマーケットで調達したり、外食したり、と多くを他人から調達する(アウトソース)方向に動いてきた。即ち他人の時間を買っている訳である。他人の時間を買うことで、自らは代替性の効かない、独創性と付加価値の高い業務にシフトしていくということである。これはごく一部であるが、他にも仕事のやり方、情報収集の仕方、時間の使い方等々で素晴らしい着眼点満載である。
同じ著者の↓コレもお買い得な内容。
共感したポイントを一部挙げると、
・アウトプットを想定しないインプットはしない
・アウトプットというのは説得力のこと
・本を読んだ後に付箋を貼ったところ、線を引いた箇所等をサッとおさらいする「黄金の5分間」の重要性
・選択の余地の無い「締切効果」で生産性を数倍上げる(30時間かかっていたものを25時間で仕上げるのではなく、3時間で仕上げるには、単なるスピードアップではなく「やり方そのもの」を変革する必要がある)
等々。
☆☆☆☆
製品の売り方、顧客管理、マーケティング施策等から、個人の仕事のやり方から、パーソナルな時間の使い方に至るまで、片っ端から80/20の法則を適用して「80%の結果を生み出している20%の活動にフォーカスする」ことを説いている。要は選択と集中に関する内容。10年程前に出版されたもののrevised版である。
特に興味深いのは「タイムマネジメントなどクソ食らえ」という部分である。即ち、「タイムマネジメントは80/20の法則を適用して、やるべきことと捨てるべき事を明確に峻別しない状態のまま、全体の生産性を上げようとしているところに、根本的な間違いがある」ということで、Don't try to manage time, but revolutionize time and multiply the 20% of your time that produces 80% of results.という感じである。確かに、これは正鵠を得ており、どこかで「どんなに忙しくても、本当に自分にとって最重要なことに費やす時間が不足することなどない」といった趣旨の言葉を読んだことがある。即ち、人間は忙しさが増すと、自分にとって重要度・優先順位の低い事柄から順に「斬り捨てる、無視する、わざとやらない、後回しにする」といった行動をとるはずであり、自分にとって最重要なことに費やす時間も無いようであれば、それは、そもそも自分の優先順位付けそのものが、何か大きく間違っている、ということなのだろう。
因みに、本書は下記の本を読んでいた際に推薦図書として挙がっていので読んだ。
↑この本は80/20 principleを個人の生き方・生活大改造の為に最大限に活かしている画期的な本である。自分がインパクトを与えることができる活動を最大限にする為に、20%の結果しか生まないが80%の時間・労力をかけている活動は大胆に止めてしまうか、或いは「他人の時間」を使ってやる、といったことも提唱している。例えば、自らの日常の事務的な雑事で且つリモートでできることを、どこかの国の人に個人秘書業務を御願いするとか、である。既に企業は製造・サービス・研究開発等あらゆる面でインド・中国・その他の国々への大々的なアウトソーシングという形でこれをやっている訳である。ならば個人レベルでやれない理由も無いということである。
更に、80/20の法則が底流にあるという意味で、上記の本と一部類似の視点があり秀逸なものがコレ↓である。
人類の歴史は自給自足で、衣食住の全てを自分達でやることから、衣料はお店で買い、他人が建設した家やマンションを買って住み、食料はスーパーマーケットで調達したり、外食したり、と多くを他人から調達する(アウトソース)方向に動いてきた。即ち他人の時間を買っている訳である。他人の時間を買うことで、自らは代替性の効かない、独創性と付加価値の高い業務にシフトしていくということである。これはごく一部であるが、他にも仕事のやり方、情報収集の仕方、時間の使い方等々で素晴らしい着眼点満載である。
同じ著者の↓コレもお買い得な内容。
共感したポイントを一部挙げると、
・アウトプットを想定しないインプットはしない
・アウトプットというのは説得力のこと
・本を読んだ後に付箋を貼ったところ、線を引いた箇所等をサッとおさらいする「黄金の5分間」の重要性
・選択の余地の無い「締切効果」で生産性を数倍上げる(30時間かかっていたものを25時間で仕上げるのではなく、3時間で仕上げるには、単なるスピードアップではなく「やり方そのもの」を変革する必要がある)
等々。
Sunday, April 18, 2010
[Book Review]考える・まとめる・表現する―アメリカ式「主張の技術」
☆☆☆☆☆
これは役に立つ、というか「英語で理解されるように考えて書く」為のツールと考え方を、解り易く形でパッケージにした素晴らしい本である。そういえば、昔交換留学した際にEnglish Compositionとかのクラスでやったし、大学院留学の際にも↓この本(当時は初版だった)を買って準備したことを思い出した。
あるいは、近年手に取ってみたテキストでは、↓これも良いと思う。
しかし、こういう内容が、これだけコンパクトに纏まっている本にはお目にかかったことがなかった。エッセイを書く際のthesis statement, それをサポートする各argumentのtopic sentence, テーマの主張ををrecapする形でのconclusionといった三角形のエッセイ・ピラミッドの考え方は、著者の言うように、単に論文を書く為だけでなく、スピーチを聞く時や読書をする際にも、内容を素早く整理して理解するには、とても使えそうである。自分の子供がアメリカで小学校に行っていた頃のshow and tellやマインドマップを使った纏め方等々を思い出してもそうであるが、著者が言うように、これってアメリカ式「主張の技術」の根幹を成すものなのだと思う。
一方、自らを振り返ってみれば、勤務先のglobalベースでのleadership研修などに行くと、(英語力の壁は勿論あるのだが)特に多数の参加者での議論になった際に、相手の発言内容を素早く理解し、自分の言いたいことを素早く整理して返したり、brain stormingや小グループに分かれての議論の結果を発表したりといった際に、圧倒的な彼我の訓練の差を思い知らされ、世界を舞台に議論し発信していくことに絶望感を覚えて帰国するということを何度も経験してきたが、そういう部分も、日ごろから、こういった英語の思考・主張の技術を、ものを書くときのみならず、読書したり議論する際にも、もっと意識的に使っていくことで少しは上達するのであろうという希望も湧いてくる。
因みに著者はKids' SpaceというNPOを主催しておられる方である。
Friday, March 26, 2010
[Book Review] Diary of a Hedge Fund Manager: From the Top, to the Bottom, and Back Again
"Being right early is called being wrong"
☆☆☆
投資銀行とヘッジファンド数社での経験を通じて、新たに独自のマクロ視点での投資調査会社Research Edge(現在はHedgeyeに社名変更)を立ち上げた著者が、カナダのオンタリオ州に生まれアイスホッケーに明け暮れた自らの生い立ちからヘッジファンドでの日々、そして最後に2007年秋に解雇となった経緯をその世界に身を置いた者として内側から語ったもの。投資銀行及びヘッジファンド内での group thinkがバブル末期を煽っていった状況や、特にヘッジファンドでの最後の数ヶ月は、著者自らの投資に対する見方・判断からマーケットのクラッシュは近いと主張したことに対する、周囲の強気筋からの変人扱いや蔑み、そして、予測のタイミングが若干早過ぎたこともあり、短期的にはトレーディングのパフォーマンスが出ずに解雇に繋がった経緯、そして、その後も独自の視点や判断をベースに情報を発信し続け、やがて投資調査会社の立ち上げ、マーケット暴落を予測する様子を描いている。また、そうした経験を通じて、他人とは異なる独自の視点を持つことが如何に大切かを語っている。
10年程前にアメリカの投資関連か何かのTVコマーシャで、テニス・プレーヤーが相手のサーブが打ち込まれてから数秒後に(既にボールは自分の横を過ぎ去った暫く後に)、完璧に美しいフォームで相手のサーブを打ち返すようにラケットを振るシーンが映し出され、そこにTiming is everythingというナレーションが入るというものがあった。アメリカが住宅バブルの状況にあることは、1980年代後半の不動産バブルを経験した日本人の眼には2000年代の前半には明らかであったと思うし、それが「いつか」崩壊するであろうことも見通していたと思うが、「いつかそのうち」ではなく「具体的にいつ」かが当たらないとカネにはならない。即ちTiming is everythingであり本書にもあるBeing right early is called being wrongということである。
☆☆☆
投資銀行とヘッジファンド数社での経験を通じて、新たに独自のマクロ視点での投資調査会社Research Edge(現在はHedgeyeに社名変更)を立ち上げた著者が、カナダのオンタリオ州に生まれアイスホッケーに明け暮れた自らの生い立ちからヘッジファンドでの日々、そして最後に2007年秋に解雇となった経緯をその世界に身を置いた者として内側から語ったもの。投資銀行及びヘッジファンド内での group thinkがバブル末期を煽っていった状況や、特にヘッジファンドでの最後の数ヶ月は、著者自らの投資に対する見方・判断からマーケットのクラッシュは近いと主張したことに対する、周囲の強気筋からの変人扱いや蔑み、そして、予測のタイミングが若干早過ぎたこともあり、短期的にはトレーディングのパフォーマンスが出ずに解雇に繋がった経緯、そして、その後も独自の視点や判断をベースに情報を発信し続け、やがて投資調査会社の立ち上げ、マーケット暴落を予測する様子を描いている。また、そうした経験を通じて、他人とは異なる独自の視点を持つことが如何に大切かを語っている。
10年程前にアメリカの投資関連か何かのTVコマーシャで、テニス・プレーヤーが相手のサーブが打ち込まれてから数秒後に(既にボールは自分の横を過ぎ去った暫く後に)、完璧に美しいフォームで相手のサーブを打ち返すようにラケットを振るシーンが映し出され、そこにTiming is everythingというナレーションが入るというものがあった。アメリカが住宅バブルの状況にあることは、1980年代後半の不動産バブルを経験した日本人の眼には2000年代の前半には明らかであったと思うし、それが「いつか」崩壊するであろうことも見通していたと思うが、「いつかそのうち」ではなく「具体的にいつ」かが当たらないとカネにはならない。即ちTiming is everythingであり本書にもあるBeing right early is called being wrongということである。
Sunday, March 21, 2010
[Book Review] 「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)
☆☆☆
全般的には、なかなか為になる本であるが、一点気になったのが、本書の冒頭部分(pp.31-32)で著者はDruckerを引き合いに出しながらも、「利益を出すことが事業の目的ではなく条件である」ということが、「社会貢献」にどうやって結びついているのかを、必ずしも上手く説明していない。
「利益を出すことは目的ではなく事業存続の為の必要条件である」というのは資本主義の論理的帰結であると思う。事業成功の尺度(return)をP/L上の利益で捉えようがcashflowsで捉えようが(長期的には両者のレベルは収斂する)、returnが出ていないということは、投資に対して見返りが無いということであり、(道路や通信インフラといった公共財等の場合を除けば)そのような投資は社会全体で見れば資源の無駄使い(社会に貢献していない)ということになる。そしてreturnの出ていない事業への投資はreturnが出ている投資に再配分されるべきなはず。そういう意味で儲かっていない事業には存在意義はないのである。とても明々白々なことだと思うが....。
Peter Druckerも著書“Management”の”6. What Is a Business?”という章で以下のように述べている。
Profit and profitability are, however, crucial – for society even more than for the individual business. Yet profitability is not the purpose of but a limiting factor on business enterprise and business activity. Profit is not the explanation, cause, or rationale on business behavior and business decisions, but the test of their validity. …….….Actually, a company can make a social contribution only if it is highly profitable…..
Sunday, February 7, 2010
[Book Revew] Talent Is Overrated: What Really Separates World-Class Performers from Everybody Else
才能ではなく“deliberate practice”が世界の超一流をつくる
☆☆☆☆
本書のテーマは、題名の通り、スポーツ、音楽、ビジネス、学問(例えばノーベル賞受賞者)等の領域を問わず、世界の超一流とそれ以外の人々の違いは一体何から生じるのか?というもの。それで、差異を生じさせるものは生来の才能といったものではなく(だから題名が”Talent is overrated[才能は過大評価されている]”となっている)、”deliberate practice”(意図的・計画的な練習)によるところが大きいと論じている。”deliberate practice”とは、特定の分野で自分が上手く出来ない部分に焦点を当てて、それを繰り返し何度も練習し、且つ練習の出来具合に関してタイムリーにフィードバックが得られるような環境で行われる(通常はかなりの苦痛を伴う)高レベルのものを指す。
因みに、本書よりも1ヶ月程後に出版されたMalcolm Gladwellの“Outliers: The Story of Success” (邦訳「天才! 成功する人々の法則」)で”The 10,000-hour rule” (1万時間ルール)というものが物事を極める迄に費やさなければいけない時間の目安として紹介されているが、本書では、その辺りも詳述されている。
では、とてつもなく多くの時間をdeliberate practiceに費す原動力乃至は情熱というものは、生来の素質なのか?それとも徐々に当事者個々人の中でdevelopされていくものなのか?といえば、これまた後者であるとのこと。但し、超一流の人達も、最初は親の意向で嫌々始めたのが、他人からの賞賛、家族やコーチの支援、同じ分野での超一流の人との出会いによる触発、等々種々の出来事を通じて、いつしか自らの内側からの強烈なモチベーションが醸成されていくようなケースが多いらしい。これらの種々の様々な要因が重なり合っていく効果をMultiplier effect (経済学では「乗数効果」のことだが)と称している。
また、こうした超一流になっていく環境を、例えばビジネスの世界では、どのように組織制度のデザイン面で参考にしていくべきか、といった点にも言及している。
自らのキャリア開発及び組織での人材開発の観点で参考になる。
p.s.余談であるが島田紳助著の「自己プロヂュース力」などを読むと、かつての紳助・竜介の漫才などは、まさにdeliberate practiceの賜物であることがわかる。
☆☆☆☆
本書のテーマは、題名の通り、スポーツ、音楽、ビジネス、学問(例えばノーベル賞受賞者)等の領域を問わず、世界の超一流とそれ以外の人々の違いは一体何から生じるのか?というもの。それで、差異を生じさせるものは生来の才能といったものではなく(だから題名が”Talent is overrated[才能は過大評価されている]”となっている)、”deliberate practice”(意図的・計画的な練習)によるところが大きいと論じている。”deliberate practice”とは、特定の分野で自分が上手く出来ない部分に焦点を当てて、それを繰り返し何度も練習し、且つ練習の出来具合に関してタイムリーにフィードバックが得られるような環境で行われる(通常はかなりの苦痛を伴う)高レベルのものを指す。
因みに、本書よりも1ヶ月程後に出版されたMalcolm Gladwellの“Outliers: The Story of Success” (邦訳「天才! 成功する人々の法則」)で”The 10,000-hour rule” (1万時間ルール)というものが物事を極める迄に費やさなければいけない時間の目安として紹介されているが、本書では、その辺りも詳述されている。
では、とてつもなく多くの時間をdeliberate practiceに費す原動力乃至は情熱というものは、生来の素質なのか?それとも徐々に当事者個々人の中でdevelopされていくものなのか?といえば、これまた後者であるとのこと。但し、超一流の人達も、最初は親の意向で嫌々始めたのが、他人からの賞賛、家族やコーチの支援、同じ分野での超一流の人との出会いによる触発、等々種々の出来事を通じて、いつしか自らの内側からの強烈なモチベーションが醸成されていくようなケースが多いらしい。これらの種々の様々な要因が重なり合っていく効果をMultiplier effect (経済学では「乗数効果」のことだが)と称している。
また、こうした超一流になっていく環境を、例えばビジネスの世界では、どのように組織制度のデザイン面で参考にしていくべきか、といった点にも言及している。
自らのキャリア開発及び組織での人材開発の観点で参考になる。
p.s.余談であるが島田紳助著の「自己プロヂュース力」などを読むと、かつての紳助・竜介の漫才などは、まさにdeliberate practiceの賜物であることがわかる。
Sunday, January 24, 2010
[Book Review] A Practical Guide to Software Licensing for Licensees and Licensors
実務的で解り易く、licensors/licensees双方の視点から留意点を記載
☆☆☆☆
自分のようなfinance関係の人間でも、software licenseに関しての基本的な知識が無いと、legalやtaxの人間との話ができなかったり、deal structuringの際にも支障をきたすことがあるので、気になった契約条項の背景や考え方等を知る目的で辞書のような感覚で使おうと思い購入した。
最初の250ページ程度がトピック毎の説明で、残りは注釈付きの契約書を含めた各種サンプル契約書といった構成になっているが、
・各トピックの説明は実務的で分り易く、
・前半の個々のトピック毎の説明箇所と、後半の注釈付きサンプル契約書間でcross referencesが施されており便利、
・注釈付きサンプル契約書の注釈はかなり丁寧、
・licensors/licensees双方の視点からの記述はバランスがとれており、契約の相手側の立場ならどういうことを考えるのか?ということも解って有益、
といった点で優れていると思う。
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自分のようなfinance関係の人間でも、software licenseに関しての基本的な知識が無いと、legalやtaxの人間との話ができなかったり、deal structuringの際にも支障をきたすことがあるので、気になった契約条項の背景や考え方等を知る目的で辞書のような感覚で使おうと思い購入した。
最初の250ページ程度がトピック毎の説明で、残りは注釈付きの契約書を含めた各種サンプル契約書といった構成になっているが、
・各トピックの説明は実務的で分り易く、
・前半の個々のトピック毎の説明箇所と、後半の注釈付きサンプル契約書間でcross referencesが施されており便利、
・注釈付きサンプル契約書の注釈はかなり丁寧、
・licensors/licensees双方の視点からの記述はバランスがとれており、契約の相手側の立場ならどういうことを考えるのか?ということも解って有益、
といった点で優れていると思う。
Sunday, November 22, 2009
[Book Review] This Time Is Different: Eight Centuries of Financial Folly
”There is nothing new except what is forgotten”- Rose Bertin
☆☆☆☆
最終章(第17章)が収められている第四部のテーマ”What have we learned?”の下に、このローズ・ベルタン(ルイ16世の王妃マリー・アントワネットに仕えたデザイナーらしい)の言葉が添えられているのがユーモラスである。
タイトルの”This time is different”「今回は違う」は勿論反語的に使われており、好景気の時でも今回のような未曾有の世界経済危機からの脱却の際でも「今回は(これまでとは)違う」という種々のもっともらしい理由が喧伝されるが、膨大なデータに基き過去数世紀に渡る世界の債務不履行や金融危機の歴史を紐解いてみると、「今回は違うシンドローム」の信憑性は疑わしく、世界経済の先行きを楽観するのは全く時期尚早であり、むしろデータから読み取れる「歴史は繰り返す」ということを充分に念頭においておく必要があると本書は警鐘している。
その例として、14章に纏めてある興味深い数字を幾つか紹介すると(対象期間は殆どが第二次世界大戦後の世界中の経済危機で一部戦前の大恐慌時のケースを含む。数字は経済危機発生前のピーク時と危機発生後の底値の差を示したもの)、
■住宅価格は平均すると6年間に渡り下落し平均下落率は▲35.5%
■株価下落は平均で3.4年間に渡り平均下落率は▲55.9%
■失業率は平均で4.8年間に及び平均上昇率は+7%
また、政府債務といえば、これ迄は、データの入手が極めて困難であるという事情もあってか、対外債務にのみ焦点が当てられることが多かったようであるが、著者達は世界各国の国内の債務状況に関するデータも整理したうえで、これらの影響は無視できないとしている。
非常に広範囲で長期に渡るデータを整理したうえでの実証研究であり読み応えがあると共に、膨大なデータから過去を検証して、そこから読み取れることをベースにした謙虚な提言の書である。
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最終章(第17章)が収められている第四部のテーマ”What have we learned?”の下に、このローズ・ベルタン(ルイ16世の王妃マリー・アントワネットに仕えたデザイナーらしい)の言葉が添えられているのがユーモラスである。
タイトルの”This time is different”「今回は違う」は勿論反語的に使われており、好景気の時でも今回のような未曾有の世界経済危機からの脱却の際でも「今回は(これまでとは)違う」という種々のもっともらしい理由が喧伝されるが、膨大なデータに基き過去数世紀に渡る世界の債務不履行や金融危機の歴史を紐解いてみると、「今回は違うシンドローム」の信憑性は疑わしく、世界経済の先行きを楽観するのは全く時期尚早であり、むしろデータから読み取れる「歴史は繰り返す」ということを充分に念頭においておく必要があると本書は警鐘している。
その例として、14章に纏めてある興味深い数字を幾つか紹介すると(対象期間は殆どが第二次世界大戦後の世界中の経済危機で一部戦前の大恐慌時のケースを含む。数字は経済危機発生前のピーク時と危機発生後の底値の差を示したもの)、
■住宅価格は平均すると6年間に渡り下落し平均下落率は▲35.5%
■株価下落は平均で3.4年間に渡り平均下落率は▲55.9%
■失業率は平均で4.8年間に及び平均上昇率は+7%
また、政府債務といえば、これ迄は、データの入手が極めて困難であるという事情もあってか、対外債務にのみ焦点が当てられることが多かったようであるが、著者達は世界各国の国内の債務状況に関するデータも整理したうえで、これらの影響は無視できないとしている。
非常に広範囲で長期に渡るデータを整理したうえでの実証研究であり読み応えがあると共に、膨大なデータから過去を検証して、そこから読み取れることをベースにした謙虚な提言の書である。
Sunday, August 30, 2009
[Book Review] Exotic Preferences: Behavioral Economics and Human Motivation
人間の心の奥底を捉える深い考察
☆☆☆☆
行動経済学の第一人者Loewenstein教授が、過去に発表した自らの学術論文のうち20本余りを集めたもので、各論文の最初の部分では、論文を執筆した背景や意図を紹介している。これらの論文のテーマとなっているのは、個々人の好み・選好というのは、どのように形成されるのか?それらは予測可能なのか?どの程度理性ではなく感情に左右されるのか?といったことである。
例えば最初の論文では、世界的な登山家や探検家(エベレスト、南極等)といった人達を取り上げ、何が彼らを、遭難・凍傷・生命の危機と隣り合わせのハイリスクで想像を絶する過酷な自然環境への挑戦に駆り立てるのか?を登山家・探検家が書いた書物を紐解きながら考察している。
私自身は経済学者でも心理学者でもない一介のビジネスパーソン故に、諸学説の発展や相互の関係といった点には興味も無いが、人間の心理の奥底をえぐるような本質的な考察は読んでいて非常に興味深い。最近では、行動経済学の分野では、種々の研究成果を私のような一般の読者にも解り易く面白く紹介した一般書物が出版されており(例えば、Dan Ariely著”Predictably Irrational”邦題:「予想どおりに不合理」)、
それらは非常に有益であることに異論はないが、本書のような第一人者の一つ一つのテーマで掘り下げて書いた論文は、素人には取っ付き難いながらも、深い考察を読み取ることが出来て違った楽しみがある。
☆☆☆☆
行動経済学の第一人者Loewenstein教授が、過去に発表した自らの学術論文のうち20本余りを集めたもので、各論文の最初の部分では、論文を執筆した背景や意図を紹介している。これらの論文のテーマとなっているのは、個々人の好み・選好というのは、どのように形成されるのか?それらは予測可能なのか?どの程度理性ではなく感情に左右されるのか?といったことである。
例えば最初の論文では、世界的な登山家や探検家(エベレスト、南極等)といった人達を取り上げ、何が彼らを、遭難・凍傷・生命の危機と隣り合わせのハイリスクで想像を絶する過酷な自然環境への挑戦に駆り立てるのか?を登山家・探検家が書いた書物を紐解きながら考察している。
私自身は経済学者でも心理学者でもない一介のビジネスパーソン故に、諸学説の発展や相互の関係といった点には興味も無いが、人間の心理の奥底をえぐるような本質的な考察は読んでいて非常に興味深い。最近では、行動経済学の分野では、種々の研究成果を私のような一般の読者にも解り易く面白く紹介した一般書物が出版されており(例えば、Dan Ariely著”Predictably Irrational”邦題:「予想どおりに不合理」)、
それらは非常に有益であることに異論はないが、本書のような第一人者の一つ一つのテーマで掘り下げて書いた論文は、素人には取っ付き難いながらも、深い考察を読み取ることが出来て違った楽しみがある。
Sunday, March 1, 2009
[Book Review] Outliers: The Story of Success
成功要因=成功者自身の周辺環境や時代背景が幾つか重なった結果....
☆☆☆☆☆
これまで成功と言うモノは、個人の資質や努力といった面に多くの焦点を当てて語られることが多かった。
本書で著者は、成功した人自身の努力の程度もさることながら、その本人の生まれた年、祖先の出身地、人種や気質、両親の職業、社会制度や法律の制定された年等々、本人を取り巻く周辺環境や時代背景に視点を拡げて観察している。そして、成功というのは、時代背景や環境等、各々の要因を個別に見れば決して重要乃至は決定的とは思えないような、小さな幸運・偶然・機会が幾つも重なった上に成り立っているという事実を、幾つかの例(1月生まれのアイスホッケー選手が多い理由、ビートルズが有名になった理由、ビル・ゲイツが成功した理由、ユダヤ系に成功した企業のtake-over関連の弁護士が多い理由、アジア系の学生が一般的に数学が得意な理由等)を挙げて述べている。逆に、各々の要因を個々に見れば全く致命的ではないような些細な過失や不運が幾つも重なると大惨事(飛行機事故や原子力発電所の事故等)に至る原因となり得ることも指摘している。
著者の本はいつも、これまでは考えても見なかったような視点から、社会現象や物事の本質を解明するという部分が非常に斬新で面白い。
☆☆☆☆☆
これまで成功と言うモノは、個人の資質や努力といった面に多くの焦点を当てて語られることが多かった。
本書で著者は、成功した人自身の努力の程度もさることながら、その本人の生まれた年、祖先の出身地、人種や気質、両親の職業、社会制度や法律の制定された年等々、本人を取り巻く周辺環境や時代背景に視点を拡げて観察している。そして、成功というのは、時代背景や環境等、各々の要因を個別に見れば決して重要乃至は決定的とは思えないような、小さな幸運・偶然・機会が幾つも重なった上に成り立っているという事実を、幾つかの例(1月生まれのアイスホッケー選手が多い理由、ビートルズが有名になった理由、ビル・ゲイツが成功した理由、ユダヤ系に成功した企業のtake-over関連の弁護士が多い理由、アジア系の学生が一般的に数学が得意な理由等)を挙げて述べている。逆に、各々の要因を個々に見れば全く致命的ではないような些細な過失や不運が幾つも重なると大惨事(飛行機事故や原子力発電所の事故等)に至る原因となり得ることも指摘している。
著者の本はいつも、これまでは考えても見なかったような視点から、社会現象や物事の本質を解明するという部分が非常に斬新で面白い。
Sunday, September 28, 2008
[Book Review] The Subprime Solution: How Today's Global Financial Crisis Happened, and What to Do About It
再び「必要は発明の母」となって経済社会は発展するか?
☆☆☆☆
サブプライム危機に短期的には救済で対応し国民心理の冷え込みが経済全体に及ぼす甚大なインパクトを回避し, 長期的にはデリバティブ等の金融技術の不動産市場への適用によるリスクの小口化・分散化を図り、持家関連の各種保険制度の整備拡充といった社会インフラとしての金融制度を充実発展させて、その効果を国民全体が享受できるようにすること(financial democracy)であると説く。
1929年の世界恐慌後に発明(創設)された住宅ローン関連の種々の制度、預金保険機構、証取委員会の設置といった(現在では当たり前と思われているような)社会インフラの整備は、当時の状況からは非常に大胆な発想だったが、現下の危機に臨むに際しても同様に「必要は発明の母」としての想像力豊かで大胆な発想が求められており、著者の提言は長期的施策の中身の一部を構成する。関心させられるのは、金融技術の進歩に対する、この確固たる揺ぎ無い信念である。
一方で、私は金融の門外漢で見識も持ち合わせていないが、長期的施策の前提となるべき部分では、(本書151ページで引用されている論文からも) デリバティブが資産市場のボラティリティを縮小させるということは必ずしも実証研究では(否定的結論は出ていないものの)総じて肯定的には証明されている訳ではない様であるし(但し流動性面では効果はあるらしい)、不動産関連市場でのデリバティブの推進が不動産バブルの発生を回避することに繋がるのかどうかは、デリバティブが更に進んだ株式市場でも依然バブルは発生していることを考えると効果の程については良くわからない。また、そもそもデリバティブを通じて不動産関連のリスクを小口化し広く分散化させることが経済にとって良いことであると言えるレベルまで、現実のリスクマネジメントの方法論や手法は発展していないのではないか?という漠然とした懸念は依然残る。
☆☆☆☆
サブプライム危機に短期的には救済で対応し国民心理の冷え込みが経済全体に及ぼす甚大なインパクトを回避し, 長期的にはデリバティブ等の金融技術の不動産市場への適用によるリスクの小口化・分散化を図り、持家関連の各種保険制度の整備拡充といった社会インフラとしての金融制度を充実発展させて、その効果を国民全体が享受できるようにすること(financial democracy)であると説く。
1929年の世界恐慌後に発明(創設)された住宅ローン関連の種々の制度、預金保険機構、証取委員会の設置といった(現在では当たり前と思われているような)社会インフラの整備は、当時の状況からは非常に大胆な発想だったが、現下の危機に臨むに際しても同様に「必要は発明の母」としての想像力豊かで大胆な発想が求められており、著者の提言は長期的施策の中身の一部を構成する。関心させられるのは、金融技術の進歩に対する、この確固たる揺ぎ無い信念である。
一方で、私は金融の門外漢で見識も持ち合わせていないが、長期的施策の前提となるべき部分では、(本書151ページで引用されている論文からも) デリバティブが資産市場のボラティリティを縮小させるということは必ずしも実証研究では(否定的結論は出ていないものの)総じて肯定的には証明されている訳ではない様であるし(但し流動性面では効果はあるらしい)、不動産関連市場でのデリバティブの推進が不動産バブルの発生を回避することに繋がるのかどうかは、デリバティブが更に進んだ株式市場でも依然バブルは発生していることを考えると効果の程については良くわからない。また、そもそもデリバティブを通じて不動産関連のリスクを小口化し広く分散化させることが経済にとって良いことであると言えるレベルまで、現実のリスクマネジメントの方法論や手法は発展していないのではないか?という漠然とした懸念は依然残る。
[Book Review] Predictably Irrational: The Hidden Forces That Shape Our Decisions
人間というのは...なんとも非合理的....
☆☆☆☆☆
所謂一般読者向けに経済学と心理学に跨る領域を扱う行動経済学の種々のリサーチ結果から、一見以外な人間の非合理性を焙り出す面白い内容になっている。例えば、
・全く関係ない数字を、ある商品を買っても良い価格判断のベースにしてしまったり、
・数種類のオファリング価格の中にダミーが入っていると無意識にその価格に引っ張られた判断をしてしまったり、
・無料と1円の差異が判断に及ぼす心理的インパクトはとてつも無く大きかったり、
・社会規範(social norm)と市場規範(market norm)の文脈を間違えて、互恵といった考え方に代表される前者の文脈で対処すべきところに、後者のお金の概念を持ち込むと人間関係、企業の消費者対応や従業員対応等々あらゆる面で総スカンを食うとか、
・人間は冷静な状態と興奮した状態では好き嫌いや善悪の許容度といった点での判断に大きな差が出てしまうとか、
・自分が所有している物の価値測定に際しては感情移入をしてしまう結果とてつもなく過大評価をしてしまう、
等々、多くの意外性を持ったリサーチ結果から、人間の判断というのは、これまでの標準的な経済学が前提としているような合理的なものではなく、非合理的なことが多く、且つその非合理性はランダムで無分別なものではなく、システマチックで予測可能なものである(≒人間は首尾一貫して非合理的)なのであると説いている。人間とはそういうものだということを知っておくだけでも、いろんな間違いを回避することには役立ちそうである。
本書と殆ど同じ領域を扱っている本として”Sway: The Irresistible Pull of Irrational Behavior”も読んでみたが、どちらか1冊読むのであれば、内容の充実度から本書(Predictably Irrational)をお勧めする。
☆☆☆☆☆
所謂一般読者向けに経済学と心理学に跨る領域を扱う行動経済学の種々のリサーチ結果から、一見以外な人間の非合理性を焙り出す面白い内容になっている。例えば、
・全く関係ない数字を、ある商品を買っても良い価格判断のベースにしてしまったり、
・数種類のオファリング価格の中にダミーが入っていると無意識にその価格に引っ張られた判断をしてしまったり、
・無料と1円の差異が判断に及ぼす心理的インパクトはとてつも無く大きかったり、
・社会規範(social norm)と市場規範(market norm)の文脈を間違えて、互恵といった考え方に代表される前者の文脈で対処すべきところに、後者のお金の概念を持ち込むと人間関係、企業の消費者対応や従業員対応等々あらゆる面で総スカンを食うとか、
・人間は冷静な状態と興奮した状態では好き嫌いや善悪の許容度といった点での判断に大きな差が出てしまうとか、
・自分が所有している物の価値測定に際しては感情移入をしてしまう結果とてつもなく過大評価をしてしまう、
等々、多くの意外性を持ったリサーチ結果から、人間の判断というのは、これまでの標準的な経済学が前提としているような合理的なものではなく、非合理的なことが多く、且つその非合理性はランダムで無分別なものではなく、システマチックで予測可能なものである(≒人間は首尾一貫して非合理的)なのであると説いている。人間とはそういうものだということを知っておくだけでも、いろんな間違いを回避することには役立ちそうである。
本書と殆ど同じ領域を扱っている本として”Sway: The Irresistible Pull of Irrational Behavior”も読んでみたが、どちらか1冊読むのであれば、内容の充実度から本書(Predictably Irrational)をお勧めする。
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