Sunday, May 23, 2010

[Book Review] The 80/20 Principle: The Secret of Achieving More with Less

企業の諸施策、個々人の業務、パーソナル・ライフのあらゆる面にパレートの法則を適用する


☆☆☆☆
製品の売り方、顧客管理、マーケティング施策等から、個人の仕事のやり方から、パーソナルな時間の使い方に至るまで、片っ端から80/20の法則を適用して「80%の結果を生み出している20%の活動にフォーカスする」ことを説いている。要は選択と集中に関する内容。10年程前に出版されたもののrevised版である。
特に興味深いのは「タイムマネジメントなどクソ食らえ」という部分である。即ち、「タイムマネジメントは80/20の法則を適用して、やるべきことと捨てるべき事を明確に峻別しない状態のまま、全体の生産性を上げようとしているところに、根本的な間違いがある」ということで、Don't try to manage time, but revolutionize time and multiply the 20% of your time that produces 80% of results.という感じである。確かに、これは正鵠を得ており、どこかで「どんなに忙しくても、本当に自分にとって最重要なことに費やす時間が不足することなどない」といった趣旨の言葉を読んだことがある。即ち、人間は忙しさが増すと、自分にとって重要度・優先順位の低い事柄から順に「斬り捨てる、無視する、わざとやらない、後回しにする」といった行動をとるはずであり、自分にとって最重要なことに費やす時間も無いようであれば、それは、そもそも自分の優先順位付けそのものが、何か大きく間違っている、ということなのだろう。

因みに、本書は下記の本を読んでいた際に推薦図書として挙がっていので読んだ。

↑この本は80/20 principleを個人の生き方・生活大改造の為に最大限に活かしている画期的な本である。自分がインパクトを与えることができる活動を最大限にする為に、20%の結果しか生まないが80%の時間・労力をかけている活動は大胆に止めてしまうか、或いは「他人の時間」を使ってやる、といったことも提唱している。例えば、自らの日常の事務的な雑事で且つリモートでできることを、どこかの国の人に個人秘書業務を御願いするとか、である。既に企業は製造・サービス・研究開発等あらゆる面でインド・中国・その他の国々への大々的なアウトソーシングという形でこれをやっている訳である。ならば個人レベルでやれない理由も無いということである。

更に、80/20の法則が底流にあるという意味で、上記の本と一部類似の視点があり秀逸なものがコレ↓である。

人類の歴史は自給自足で、衣食住の全てを自分達でやることから、衣料はお店で買い、他人が建設した家やマンションを買って住み、食料はスーパーマーケットで調達したり、外食したり、と多くを他人から調達する(アウトソース)方向に動いてきた。即ち他人の時間を買っている訳である。他人の時間を買うことで、自らは代替性の効かない、独創性と付加価値の高い業務にシフトしていくということである。これはごく一部であるが、他にも仕事のやり方、情報収集の仕方、時間の使い方等々で素晴らしい着眼点満載である。

同じ著者の↓コレもお買い得な内容。

共感したポイントを一部挙げると、
・アウトプットを想定しないインプットはしない
・アウトプットというのは説得力のこと
・本を読んだ後に付箋を貼ったところ、線を引いた箇所等をサッとおさらいする「黄金の5分間」の重要性
・選択の余地の無い「締切効果」で生産性を数倍上げる(30時間かかっていたものを25時間で仕上げるのではなく、3時間で仕上げるには、単なるスピードアップではなく「やり方そのもの」を変革する必要がある)
等々。

Saturday, May 15, 2010

Simon Sinek: How great leaders inspire action | Video on TED.com

Simon Sinek: How great leaders inspire action | Video on TED.com

上記のspeechで一部紹介している内容を、一冊の本として論じたのがこれ↓

まだ読み始めたばかりなので、感想は後で...。

Sunday, April 18, 2010

[Book Review]考える・まとめる・表現する―アメリカ式「主張の技術」



☆☆☆☆☆
これは役に立つ、というか「英語で理解されるように考えて書く」為のツールと考え方を、解り易く形でパッケージにした素晴らしい本である。そういえば、昔交換留学した際にEnglish Compositionとかのクラスでやったし、大学院留学の際にも↓この本(当時は初版だった)を買って準備したことを思い出した。


あるいは、近年手に取ってみたテキストでは、↓これも良いと思う。


しかし、こういう内容が、これだけコンパクトに纏まっている本にはお目にかかったことがなかった。エッセイを書く際のthesis statement, それをサポートする各argumentのtopic sentence, テーマの主張ををrecapする形でのconclusionといった三角形のエッセイ・ピラミッドの考え方は、著者の言うように、単に論文を書く為だけでなく、スピーチを聞く時や読書をする際にも、内容を素早く整理して理解するには、とても使えそうである。自分の子供がアメリカで小学校に行っていた頃のshow and tellやマインドマップを使った纏め方等々を思い出してもそうであるが、著者が言うように、これってアメリカ式「主張の技術」の根幹を成すものなのだと思う。
一方、自らを振り返ってみれば、勤務先のglobalベースでのleadership研修などに行くと、(英語力の壁は勿論あるのだが)特に多数の参加者での議論になった際に、相手の発言内容を素早く理解し、自分の言いたいことを素早く整理して返したり、brain stormingや小グループに分かれての議論の結果を発表したりといった際に、圧倒的な彼我の訓練の差を思い知らされ、世界を舞台に議論し発信していくことに絶望感を覚えて帰国するということを何度も経験してきたが、そういう部分も、日ごろから、こういった英語の思考・主張の技術を、ものを書くときのみならず、読書したり議論する際にも、もっと意識的に使っていくことで少しは上達するのであろうという希望も湧いてくる。
因みに著者はKids' SpaceというNPOを主催しておられる方である。

Friday, March 26, 2010

[Book Review] Diary of a Hedge Fund Manager: From the Top, to the Bottom, and Back Again

"Being right early is called being wrong"


☆☆☆
投資銀行とヘッジファンド数社での経験を通じて、新たに独自のマクロ視点での投資調査会社Research Edge(現在はHedgeyeに社名変更)を立ち上げた著者が、カナダのオンタリオ州に生まれアイスホッケーに明け暮れた自らの生い立ちからヘッジファンドでの日々、そして最後に2007年秋に解雇となった経緯をその世界に身を置いた者として内側から語ったもの。投資銀行及びヘッジファンド内での group thinkがバブル末期を煽っていった状況や、特にヘッジファンドでの最後の数ヶ月は、著者自らの投資に対する見方・判断からマーケットのクラッシュは近いと主張したことに対する、周囲の強気筋からの変人扱いや蔑み、そして、予測のタイミングが若干早過ぎたこともあり、短期的にはトレーディングのパフォーマンスが出ずに解雇に繋がった経緯、そして、その後も独自の視点や判断をベースに情報を発信し続け、やがて投資調査会社の立ち上げ、マーケット暴落を予測する様子を描いている。また、そうした経験を通じて、他人とは異なる独自の視点を持つことが如何に大切かを語っている。

10年程前にアメリカの投資関連か何かのTVコマーシャで、テニス・プレーヤーが相手のサーブが打ち込まれてから数秒後に(既にボールは自分の横を過ぎ去った暫く後に)、完璧に美しいフォームで相手のサーブを打ち返すようにラケットを振るシーンが映し出され、そこにTiming is everythingというナレーションが入るというものがあった。アメリカが住宅バブルの状況にあることは、1980年代後半の不動産バブルを経験した日本人の眼には2000年代の前半には明らかであったと思うし、それが「いつか」崩壊するであろうことも見通していたと思うが、「いつかそのうち」ではなく「具体的にいつ」かが当たらないとカネにはならない。即ちTiming is everythingであり本書にもあるBeing right early is called being wrongということである。

Sunday, March 21, 2010

[Book Review] 「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)




☆☆☆
全般的には、なかなか為になる本であるが、一点気になったのが、本書の冒頭部分(pp.31-32)で著者はDruckerを引き合いに出しながらも、「利益を出すことが事業の目的ではなく条件である」ということが、「社会貢献」にどうやって結びついているのかを、必ずしも上手く説明していない。
「利益を出すことは目的ではなく事業存続の為の必要条件である」というのは資本主義の論理的帰結であると思う。事業成功の尺度(return)をP/L上の利益で捉えようがcashflowsで捉えようが(長期的には両者のレベルは収斂する)、returnが出ていないということは、投資に対して見返りが無いということであり、(道路や通信インフラといった公共財等の場合を除けば)そのような投資は社会全体で見れば資源の無駄使い(社会に貢献していない)ということになる。そしてreturnの出ていない事業への投資はreturnが出ている投資に再配分されるべきなはず。そういう意味で儲かっていない事業には存在意義はないのである。とても明々白々なことだと思うが....。

Peter Druckerも著書“Management”の”6. What Is a Business?”という章で以下のように述べている。
Profit and profitability are, however, crucial – for society even more than for the individual business. Yet profitability is not the purpose of but a limiting factor on business enterprise and business activity. Profit is not the explanation, cause, or rationale on business behavior and business decisions, but the test of their validity. …….….Actually, a company can make a social contribution only if it is highly profitable…..

Sunday, February 7, 2010

[Book Revew] Talent Is Overrated: What Really Separates World-Class Performers from Everybody Else

才能ではなく“deliberate practice”が世界の超一流をつくる

☆☆☆☆
本書のテーマは、題名の通り、スポーツ、音楽、ビジネス、学問(例えばノーベル賞受賞者)等の領域を問わず、世界の超一流とそれ以外の人々の違いは一体何から生じるのか?というもの。それで、差異を生じさせるものは生来の才能といったものではなく(だから題名が”Talent is overrated[才能は過大評価されている]”となっている)、”deliberate practice”(意図的・計画的な練習)によるところが大きいと論じている。”deliberate practice”とは、特定の分野で自分が上手く出来ない部分に焦点を当てて、それを繰り返し何度も練習し、且つ練習の出来具合に関してタイムリーにフィードバックが得られるような環境で行われる(通常はかなりの苦痛を伴う)高レベルのものを指す。
因みに、本書よりも1ヶ月程後に出版されたMalcolm Gladwellの“Outliers: The Story of Success” (邦訳「天才! 成功する人々の法則」)で”The 10,000-hour rule” (1万時間ルール)というものが物事を極める迄に費やさなければいけない時間の目安として紹介されているが、本書では、その辺りも詳述されている。
では、とてつもなく多くの時間をdeliberate practiceに費す原動力乃至は情熱というものは、生来の素質なのか?それとも徐々に当事者個々人の中でdevelopされていくものなのか?といえば、これまた後者であるとのこと。但し、超一流の人達も、最初は親の意向で嫌々始めたのが、他人からの賞賛、家族やコーチの支援、同じ分野での超一流の人との出会いによる触発、等々種々の出来事を通じて、いつしか自らの内側からの強烈なモチベーションが醸成されていくようなケースが多いらしい。これらの種々の様々な要因が重なり合っていく効果をMultiplier effect (経済学では「乗数効果」のことだが)と称している。
また、こうした超一流になっていく環境を、例えばビジネスの世界では、どのように組織制度のデザイン面で参考にしていくべきか、といった点にも言及している。
自らのキャリア開発及び組織での人材開発の観点で参考になる。
p.s.余談であるが島田紳助著の「自己プロヂュース力」などを読むと、かつての紳助・竜介の漫才などは、まさにdeliberate practiceの賜物であることがわかる。

Sunday, January 24, 2010

[Book Review] A Practical Guide to Software Licensing for Licensees and Licensors

実務的で解り易く、licensors/licensees双方の視点から留意点を記載


☆☆☆☆
自分のようなfinance関係の人間でも、software licenseに関しての基本的な知識が無いと、legalやtaxの人間との話ができなかったり、deal structuringの際にも支障をきたすことがあるので、気になった契約条項の背景や考え方等を知る目的で辞書のような感覚で使おうと思い購入した。

最初の250ページ程度がトピック毎の説明で、残りは注釈付きの契約書を含めた各種サンプル契約書といった構成になっているが、
・各トピックの説明は実務的で分り易く、
・前半の個々のトピック毎の説明箇所と、後半の注釈付きサンプル契約書間でcross referencesが施されており便利、
・注釈付きサンプル契約書の注釈はかなり丁寧、
・licensors/licensees双方の視点からの記述はバランスがとれており、契約の相手側の立場ならどういうことを考えるのか?ということも解って有益、
といった点で優れていると思う。

Sunday, November 22, 2009

[Book Review] This Time Is Different: Eight Centuries of Financial Folly

”There is nothing new except what is forgotten”- Rose Bertin


☆☆☆☆
最終章(第17章)が収められている第四部のテーマ”What have we learned?”の下に、このローズ・ベルタン(ルイ16世の王妃マリー・アントワネットに仕えたデザイナーらしい)の言葉が添えられているのがユーモラスである。

タイトルの”This time is different”「今回は違う」は勿論反語的に使われており、好景気の時でも今回のような未曾有の世界経済危機からの脱却の際でも「今回は(これまでとは)違う」という種々のもっともらしい理由が喧伝されるが、膨大なデータに基き過去数世紀に渡る世界の債務不履行や金融危機の歴史を紐解いてみると、「今回は違うシンドローム」の信憑性は疑わしく、世界経済の先行きを楽観するのは全く時期尚早であり、むしろデータから読み取れる「歴史は繰り返す」ということを充分に念頭においておく必要があると本書は警鐘している。

その例として、14章に纏めてある興味深い数字を幾つか紹介すると(対象期間は殆どが第二次世界大戦後の世界中の経済危機で一部戦前の大恐慌時のケースを含む。数字は経済危機発生前のピーク時と危機発生後の底値の差を示したもの)、
■住宅価格は平均すると6年間に渡り下落し平均下落率は▲35.5%
■株価下落は平均で3.4年間に渡り平均下落率は▲55.9%
■失業率は平均で4.8年間に及び平均上昇率は+7%

また、政府債務といえば、これ迄は、データの入手が極めて困難であるという事情もあってか、対外債務にのみ焦点が当てられることが多かったようであるが、著者達は世界各国の国内の債務状況に関するデータも整理したうえで、これらの影響は無視できないとしている。
非常に広範囲で長期に渡るデータを整理したうえでの実証研究であり読み応えがあると共に、膨大なデータから過去を検証して、そこから読み取れることをベースにした謙虚な提言の書である。

Sunday, August 30, 2009

[Book Review] Exotic Preferences: Behavioral Economics and Human Motivation

人間の心の奥底を捉える深い考察



☆☆☆☆
行動経済学の第一人者Loewenstein教授が、過去に発表した自らの学術論文のうち20本余りを集めたもので、各論文の最初の部分では、論文を執筆した背景や意図を紹介している。これらの論文のテーマとなっているのは、個々人の好み・選好というのは、どのように形成されるのか?それらは予測可能なのか?どの程度理性ではなく感情に左右されるのか?といったことである。
例えば最初の論文では、世界的な登山家や探検家(エベレスト、南極等)といった人達を取り上げ、何が彼らを、遭難・凍傷・生命の危機と隣り合わせのハイリスクで想像を絶する過酷な自然環境への挑戦に駆り立てるのか?を登山家・探検家が書いた書物を紐解きながら考察している。
私自身は経済学者でも心理学者でもない一介のビジネスパーソン故に、諸学説の発展や相互の関係といった点には興味も無いが、人間の心理の奥底をえぐるような本質的な考察は読んでいて非常に興味深い。最近では、行動経済学の分野では、種々の研究成果を私のような一般の読者にも解り易く面白く紹介した一般書物が出版されており(例えば、Dan Ariely著”Predictably Irrational”邦題:「予想どおりに不合理」)、


それらは非常に有益であることに異論はないが、本書のような第一人者の一つ一つのテーマで掘り下げて書いた論文は、素人には取っ付き難いながらも、深い考察を読み取ることが出来て違った楽しみがある。

Sunday, March 1, 2009

[Book Review] Outliers: The Story of Success

成功要因=成功者自身の周辺環境や時代背景が幾つか重なった結果....




☆☆☆☆☆

これまで成功と言うモノは、個人の資質や努力といった面に多くの焦点を当てて語られることが多かった。
本書で著者は、成功した人自身の努力の程度もさることながら、その本人の生まれた年、祖先の出身地、人種や気質、両親の職業、社会制度や法律の制定された年等々、本人を取り巻く周辺環境や時代背景に視点を拡げて観察している。そして、成功というのは、時代背景や環境等、各々の要因を個別に見れば決して重要乃至は決定的とは思えないような、小さな幸運・偶然・機会が幾つも重なった上に成り立っているという事実を、幾つかの例(1月生まれのアイスホッケー選手が多い理由、ビートルズが有名になった理由、ビル・ゲイツが成功した理由、ユダヤ系に成功した企業のtake-over関連の弁護士が多い理由、アジア系の学生が一般的に数学が得意な理由等)を挙げて述べている。逆に、各々の要因を個々に見れば全く致命的ではないような些細な過失や不運が幾つも重なると大惨事(飛行機事故や原子力発電所の事故等)に至る原因となり得ることも指摘している。
著者の本はいつも、これまでは考えても見なかったような視点から、社会現象や物事の本質を解明するという部分が非常に斬新で面白い。