Sunday, January 18, 2009

[Book Review] The World Is Curved: Hidden Dangers to the Global Economy

面白い部分もあるが、冗漫で具体的処方箋に乏しい


☆☆☆

Thomas FriedmanのThe World Is Flatは主にテクノロジーや物流等実体経済の発展が世界をフラットにしている状況を描写したものであったのに対して、金融面では地平線の彼方は良く見えず様々な危険が潜んでいるという意味でThe World Is Curvedという題名となったようだ。
サブプライムに端を発して経済が急激に失速するまでの過去四半世紀は、資本と貿易のグローバリゼーションの進化と旺盛な企業家精神の発揮を両輪とした経済成長の恩恵を、ほぼ世界中の国々が享受した時代であった。現下の日々深刻化する経済状況化では、規制強化や保護主義の行き過ぎや、貧富の格差の増大に伴う階級間闘争といった国内外の懸念材料が強まってくるが、それによってグローバリゼーションを逆行させ企業家精神を殺してしまうようなことがあってはならず、今こそ政官民の卓越したリーダーシップを以て事にあたらねばならない、といった(煎じつめれば当たり前の)事を述べている。
民主主義や金融の透明性の面で十分とは言い難い国々の潤沢な外貨準備高をベースとした国策を背負った政府系投資ファンドの投資意図や、需給バランスを無視したような世界的な製造業の過剰生産能力と原材料の高騰の行く末といった部分等に関する記述は興味深い。一方で、本書の文脈とは余り関係ないと思われるような著者個人の種々の経験談に多くのページが割かれ、各章毎の内容と全体が余り上手く繋がっていないような印象を受けるうえに、数字は多く出てくるのに表やグラフが一つも無く数字と論理展開の整合性がとれているのか否か解らないような構成で、問題解決の為の具体的処方箋(how?)の提示が殆ど見られない雑誌の記事が冗漫になったような印象の残る本という感想は否めない。・・・にも関わらず、多くの著名な政治家・ポリシーメーカー・経済学者等の賛辞と推薦文が記載されているのが謎である。