Tuesday, September 26, 2006

[Book Review] A Whole New Mind: Why Right-Brainers Will Rule the Future

「左脳よりも右脳の時代」と言うよりは、「全体感を持って物事を文脈で捉えて判断できる」か否か?ということ


☆☆☆☆
ロジックや分析といった左脳中心から、全体感・ストーリー・共感.....といった右脳を活用した能力が重要になってきていることを説いている。しかし、右脳・左脳の議論を持ち出す迄もなく、これは昔も今も今後も(程度の差こそあれ)変わらない事実だと思う。Thomas Friedmanの”The World Is Flat”(邦訳「フラット化する世界」)を読んで自分の仕事環境を見渡してみれば明らかなように、アウトソーシングやオフショアが突きつけていることというのは、仕事の領域に関わらず「業務処理系」の仕事は低賃金国との競争に巻き込まれる一方で、「判断系(=物事を適切な文脈で全体感を持って解釈し判断する業務)」の仕事は、その可能性は低いということだ。
自分自身の領域である財務・経理関連を見てみても、帳簿をつけたりするだけの「処理系」は低賃金国との競争で淘汰されやすく、一方、数字とビジネスの実態を繋ぎ合わせて適切な文脈で解釈し、事業の方向性等の決定に寄与するような「判断系」の仕事は、その限りではない。後者は、本書の言葉で言えば、仕事のプロセス自体が必然的にハイ・タッチであり、仕事のアウトプットとして期待されるものはハイ・コンセプトである。
従い、実態としては著者が言うように「弁護士・会計士・ソフトウェア・エンジニアは左脳型であり・・」という程表面的ではなく、それぞれのプロフェッションの中に、淘汰されやすい処理系と、高付加価値の判断系が存在するのだと思う。だから、こういう時代に個々人が何をすれば良いか?は、自分がやっている仕事の中にヒントがあるのである。問題は、それに気づいてアクションをとれるかどうか?である。

Monday, September 11, 2006

[Book Review] The Power of Impossible Thinking: Transform the Business of Your Life and the Life of Your Business

“What you see is what you think.”



☆☆☆☆☆
個々人が乃至は組織が持っている「思考のモデル(mental model)」というものは、世の中や環境・状況の見方・解釈の仕方に関する枠組みを形成している。実際には、「見えている(と思い込んでいる)事実」というのは「内面や考え方を映し出している鏡のようなもの」であり「頭の中で意識しているものや、注意を払っているものしか見えていない」(”What you see is what you think”)。これらのことを読者に解らせようと意図した結果だと思われるが、本の始まり方や特に前半部分の各章の書き出しが実に上手くスリリングでさえある(因みに、こうした考え方は、例えばコーチングで有名なAnthony Robbinsの講演のCDなどを聴いていても言及されることである)。当然ながら、こうした思考のモデルは、場合に拠っては、異なった考え方を排除したり、新しい考えの受容を困難にしたり作用する場合がある。・・・であれば、どのようにすれば新しい思考のモデルを取り込んでいけるのか?を論じている。個人的には、この部分の具体的な方法論よりも、人間や組織というものは、自らの思考の枠組みの囚われの身であるということを、様々な例を挙げつつ「気づき」を与えてくれるという意味で、素晴らしい本だと思う。