Sunday, August 30, 2009

[Book Review] Exotic Preferences: Behavioral Economics and Human Motivation

人間の心の奥底を捉える深い考察



☆☆☆☆
行動経済学の第一人者Loewenstein教授が、過去に発表した自らの学術論文のうち20本余りを集めたもので、各論文の最初の部分では、論文を執筆した背景や意図を紹介している。これらの論文のテーマとなっているのは、個々人の好み・選好というのは、どのように形成されるのか?それらは予測可能なのか?どの程度理性ではなく感情に左右されるのか?といったことである。
例えば最初の論文では、世界的な登山家や探検家(エベレスト、南極等)といった人達を取り上げ、何が彼らを、遭難・凍傷・生命の危機と隣り合わせのハイリスクで想像を絶する過酷な自然環境への挑戦に駆り立てるのか?を登山家・探検家が書いた書物を紐解きながら考察している。
私自身は経済学者でも心理学者でもない一介のビジネスパーソン故に、諸学説の発展や相互の関係といった点には興味も無いが、人間の心理の奥底をえぐるような本質的な考察は読んでいて非常に興味深い。最近では、行動経済学の分野では、種々の研究成果を私のような一般の読者にも解り易く面白く紹介した一般書物が出版されており(例えば、Dan Ariely著”Predictably Irrational”邦題:「予想どおりに不合理」)、


それらは非常に有益であることに異論はないが、本書のような第一人者の一つ一つのテーマで掘り下げて書いた論文は、素人には取っ付き難いながらも、深い考察を読み取ることが出来て違った楽しみがある。