Saturday, May 29, 2010

[Book Review] 「借金を返すと儲かるのか?」

簿記を勉強する前に読むべき本



☆☆☆
自分のような会計やファイナンスを職業としている者を対象に書いた本では無いことは知りつつ、そういう本を読むことからの発見もあるだろうと思いから手に取った。
著者が述べているB/SとP/Lを縦に合体させた「会計公式」という考え方は、まさに、自分が20年近く前に初めて会計を勉強し始めた頃に、簿記の無味乾燥さに嫌悪感を覚えつつも「要は、この場合はB/S, P/Lのこの部分が変動するんだな..」という形で使った方法を再現したような内容だった。自分としては、こういう形で入っていく方が、ずっと取っ付き易かったし、これは会計を真面目に勉強する人にとっても、大枠を理解するところから入れる優れた方法だと思う。これが解れば、あとは変動する部分の具体的勘定科目が何か?というのは簡単な話である。自分は簿記だけを会計から切り離して勉強するなどという退屈なことはできなかったし、しなかったが、仮にこれから簿記を勉強しようと思っている学習者も、簿記を勉強する前に、先ずはこの本を読むべきだと思う。

→会計を勉強しようと思っている方々へ

「簿記を勉強する前に、先ずはこの本を読むべきだと思う」と書いてみたものの、だからと言って会計を勉強したい方々には、この本を読んだ後に簿記をやるのが良いと勧めているのかといえば、私は全くそんなことは思っていない。
むしろ、簿記という会計の単なる道具を会計そのものから切り離して学習することに大した意味があるとは思えない。アメリカで会計を勉強したので日本の本は正直余り知らないが、会計を学習するなかでその一環として道具としての簿記を一緒に学ぶというのが知的好奇心を減退させずに学ぶ方法だと思う。その意味では、(私が持っているのは随分前の版だが)以下の本は考え方が説明されている点で優れていると思う。


日本では「分厚い教科書」ということになるのだろうが、こんな程度はアメリカの大学で、学部学生が学ぶ中級財務会計の標準的なテキスト(例えば↓は定番中の定番)


に比べれば、まったく大した分量ではない。
そういえば、2-3週間程前に職場のメンバーに、上記intermediate accountingのChapter 2 (財務会計の基本的コンセプト=conceptual framework)につき説明をした。以前のいくつもの職場でもそうであったが、会計のテクニカルな面を知っていても、そのベースにあるコンセプトを充分に理解している人が案外少ないと感じていたからである。それで事前に次の問題を出して考えてもらった。
【質問】
ある会計処理をするに際して、Aと Bの2つの方法があるとします。
あなたは、どのように評価して、どちらを選びますか?

質問はたったこれだけです。因みに、
「”ある会計処理”って何の会計処理なんですか?」とか、
「AとBと2つの方法って具体的にどんな方法なんですか?」
…といった質問をしたくなるかもしれませんが、それはirrelevant (関係ない)です。

上記Kieso Intermediate AccountingのCh.2を読めば解りますし、財務会計の基本コンセプトが解っている人なら即答できるはずです。会計の質問というよりは、「frameworkっているのは、どうやって使うのか?」という話。

更にbusiness schoolとかで会計理論の勉強をすると(私がしたのは10年以上も前の話だが)、特に米国会計の場合は、financeや経済学といかに密接に繋がっているか、といのが良く解る。例えば、当時のクラスで使ったのテキストの一つが、下記のものだった(実際には数版前のもの)。


こういうのを読んで議論をする為には、上記のconceptual frameworkを良く理解していないと、もうお話にならないのである。そのようにして会計を学習してきた私は、完全に米国びいきであるが故にか、「道具である簿記を本体の会計から切り離して勉強してどうすんだよ、まったく!」という思いが非常に強いのです。

Sunday, May 23, 2010

[Book Review] The 80/20 Principle: The Secret of Achieving More with Less

企業の諸施策、個々人の業務、パーソナル・ライフのあらゆる面にパレートの法則を適用する


☆☆☆☆
製品の売り方、顧客管理、マーケティング施策等から、個人の仕事のやり方から、パーソナルな時間の使い方に至るまで、片っ端から80/20の法則を適用して「80%の結果を生み出している20%の活動にフォーカスする」ことを説いている。要は選択と集中に関する内容。10年程前に出版されたもののrevised版である。
特に興味深いのは「タイムマネジメントなどクソ食らえ」という部分である。即ち、「タイムマネジメントは80/20の法則を適用して、やるべきことと捨てるべき事を明確に峻別しない状態のまま、全体の生産性を上げようとしているところに、根本的な間違いがある」ということで、Don't try to manage time, but revolutionize time and multiply the 20% of your time that produces 80% of results.という感じである。確かに、これは正鵠を得ており、どこかで「どんなに忙しくても、本当に自分にとって最重要なことに費やす時間が不足することなどない」といった趣旨の言葉を読んだことがある。即ち、人間は忙しさが増すと、自分にとって重要度・優先順位の低い事柄から順に「斬り捨てる、無視する、わざとやらない、後回しにする」といった行動をとるはずであり、自分にとって最重要なことに費やす時間も無いようであれば、それは、そもそも自分の優先順位付けそのものが、何か大きく間違っている、ということなのだろう。

因みに、本書は下記の本を読んでいた際に推薦図書として挙がっていので読んだ。

↑この本は80/20 principleを個人の生き方・生活大改造の為に最大限に活かしている画期的な本である。自分がインパクトを与えることができる活動を最大限にする為に、20%の結果しか生まないが80%の時間・労力をかけている活動は大胆に止めてしまうか、或いは「他人の時間」を使ってやる、といったことも提唱している。例えば、自らの日常の事務的な雑事で且つリモートでできることを、どこかの国の人に個人秘書業務を御願いするとか、である。既に企業は製造・サービス・研究開発等あらゆる面でインド・中国・その他の国々への大々的なアウトソーシングという形でこれをやっている訳である。ならば個人レベルでやれない理由も無いということである。

更に、80/20の法則が底流にあるという意味で、上記の本と一部類似の視点があり秀逸なものがコレ↓である。

人類の歴史は自給自足で、衣食住の全てを自分達でやることから、衣料はお店で買い、他人が建設した家やマンションを買って住み、食料はスーパーマーケットで調達したり、外食したり、と多くを他人から調達する(アウトソース)方向に動いてきた。即ち他人の時間を買っている訳である。他人の時間を買うことで、自らは代替性の効かない、独創性と付加価値の高い業務にシフトしていくということである。これはごく一部であるが、他にも仕事のやり方、情報収集の仕方、時間の使い方等々で素晴らしい着眼点満載である。

同じ著者の↓コレもお買い得な内容。

共感したポイントを一部挙げると、
・アウトプットを想定しないインプットはしない
・アウトプットというのは説得力のこと
・本を読んだ後に付箋を貼ったところ、線を引いた箇所等をサッとおさらいする「黄金の5分間」の重要性
・選択の余地の無い「締切効果」で生産性を数倍上げる(30時間かかっていたものを25時間で仕上げるのではなく、3時間で仕上げるには、単なるスピードアップではなく「やり方そのもの」を変革する必要がある)
等々。

Saturday, May 15, 2010

Simon Sinek: How great leaders inspire action | Video on TED.com

Simon Sinek: How great leaders inspire action | Video on TED.com

上記のspeechで一部紹介している内容を、一冊の本として論じたのがこれ↓

まだ読み始めたばかりなので、感想は後で...。