百家争鳴のマネジメントの諸理論・方法論を峻別する一服の清涼剤
医学の現場では普通に行われているevidence-based(実証に基づいた)アプローチが、マネジメントの現場では軽んじられていることから説き起こし、次々と世に出てくるマネジメントの考え方や方法論のうち、どれが根拠に乏しく実効性の無いモノで、どれは実証に基づいた使用に耐え得るモノなのかを峻別することの大切さを説く。実証とは必ずしも、全てを定量分析から判断する訳ではなく、常識と論理的思考から「まやかし理論」を見抜くことが可能であると説く。また、全くのナンセンスなマネジメント理論は論外だとしても、中途半端に正しいような方法論や考え方を、置かれた状況判断をせずに適用することがもたらす悪影響にも警鐘を鳴らしている。
例えば、本書で取り上げられている話題としては、ストック・オプションや成果主義人事の企業業績との関係、仕事とそれ以外を区分するという考え方の是非、「選択と集中」が及ぼす経営の舵取りのリスク、一時期話題になったビジネス書”The War For Talent”(「ウォー・フォー・タレント-人材育成競争」)で展開される逆さまの因果関係の誤謬、等々、著名なコンサルや経営学者の主張を受け売りする前に、自分の頭で考えることの大切さを促す一服の清涼剤である。
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